アルジェリアの事件で明らかになった「リビアの混乱について日本は局外」という誤解
佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.007 「くにまる・ジャパン」発言録より
【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.007 目次】
―第1部― インテリジェンス・レポート
 ■分析メモ(No.15)「中国海軍軍艦による海上自衛隊護衛艦等に対する火器管制レーダーの照射」
 ■分析メモ(No.16)「日米同盟に亀裂を走らせるF35問題」
―第2部― 読書ノート
 ■「日本の回転ドア政治を打開するには――重要なのは経済だ」
 ■『「データ」で読み解く 安倍政権でこうなる!日本経済』
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 佐藤優さんの今後の予定(3月初旬まで)

―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録

 本コーナーは、佐藤優さんが毎月第1金曜日と第3金曜日に出演している文化放送「くにまるジャパン」での発言を紹介します。今回は2月1日放送分をお届けします。なお、ラジオでの発言を文字にするにあたり、読みやすいように修正を加えている部分もあります。野村邦丸(のむら・くにまる)氏は番組パーソナリティ、伊藤佳子(いとう・よしこ)氏は金曜日担当のパートナーです。

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邦丸: 続いて「深読みジャパン」のコーナーでは、アルジェリアで日本人の尊い命が奪われた事件が起こったばかりですが、北アフリカ一帯やアラブに関連した問題を取り上げます。リビアにカダフィ大佐という人がいましたね。このカダフィさんはずっと独裁政権を続けていたんですが、倒れ、リビアが混乱している。今後、このリビアの混乱というのが世界に大きな影響を与えるということに、佐藤さんが警鐘を鳴らしている。

佐藤: あるいは、一見関係ないようなシリア。ここに最近、イスラエルが空爆をしているけれども、実はリビア情勢と関係している。それと、化学兵器の流出がこれから大変深刻な問題になります。そういうことも含め、どうもポイントとなるニュースがなかなか日本で伝えられないのですが、リビアの問題とアルジェリアについて、その辺りのことをよく見ておくと、ああ、こういうことなのかと、みなさんにもよくわかると思うんです。

邦丸: 「アラブの春」とか「ジャスミン革命」とかいう言い方はヨーロッパ的な見方であって、実は「アラブの春」でもなんでもない、混乱が始まったのだという。

佐藤: ロシアは「アラブの春」という言い方はしないんです。ワシリエフというアフリカ研究所の有名な所長は、「革命の津波」と言っています。

邦丸: 革命の津波!

佐藤: ですから、「アラブの春」ではなく「アラブの冬」になっていくということです。

邦丸: それも「厳冬」なんですね。

佐藤: そうです。

・・・・・・(略)

邦丸: 今回、アルジェリアの人質事件が最悪の結果になってしまいましたが、日本も日本人が世界のいろいろなところに行ってビジネスを展開していますよね。

佐藤: 日本人はキリスト教でもないし、ユダヤ教でもないし、あるいはアフリカや中東でかつて植民地支配をしていたということもないから、日本人はちょっと局外なんじゃないかというのは神話です。もう通用しない。

邦丸: 日本も例外ではないと。

邦丸: 今回、アルジェリアの人質事件が最悪の結果になってしまいましたが、日本も日本人が世界のいろいろなところに行ってビジネスを展開していますよね。

佐藤: 日本人はキリスト教でもないし、ユダヤ教でもないし、あるいはアフリカや中東でかつて植民地支配をしていたということもないから、日本人はちょっと局外なんじゃないかというのは神話です。もう通用しない。

邦丸: 日本も例外ではないと。

佐藤: 例外ではない。日本も湾岸戦争以降、多国籍軍に加わっているわけですから。それから、アメリカやイギリス、フランスと組んでこういうテロとの戦いをやっている以上は、日本人も敵視されているんです。

 この前、安倍晋三総理がインドネシアに行って、大統領との会談はやったものの、演説はしないで帰ってきましたよね。安倍さんはそれは熱心に演説の準備をしたのに、なぜ演説しなかったのか。

 もし、あのときアルジェリアで事件が起きていなければ、予定どおりの「価値観を重視して、東南アジア諸国との関係を強化していこう」という演説でよかったんです。ところが、あの状況で「テロとの戦い」を言わないとどうなるか。「アルジェリアで今、こういうことが起きているというのに、テロとの戦いについて言わないのか」と非難される。そうすると普通の発想だと、ではテロとの戦いの部分を強調して、「アメリカや西側諸国、そして東南アジア諸国とも連携してイスラーム原理主義過激派をやっつけましょう」という話を演説に入れればいいんじゃないかということになりますね。

 しかし、それをもし、インドネシアでやろうものならどうなるか。インドネシアというのは人数からすると世界最大のイスラーム教国ですよ。かつて、バリでテロ事件が起きているではありませんか。そして邦人も数万人、住んでいます。

 そんな演説をやった瞬間に、「このヤロー、安倍はわれわれにケンカを売っているのか」ということになり、それがインターネットを通じて拡散して、「やっちまえ」ということになったら、インドネシアにいる邦人が狙われる可能性がある。だから、演説はしなかったのではなく、できなかったんです。こういうことは新聞にあまり書かれていないけれど、論理を追っていけば明白ですよね。

 こういう状態にあっては、日本人もいつ巻き込まれてもおかしくない、こういう構造にあっては、日本も局外ではないということなんです。それがアルジェリアの事件で可視化されたということなんです。・・・・・・

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