世界一わかりやすいスティグリッツの経済学
第6回 「人生はトレードオフの連続(2) ~合理的な人はすべての費用を考える」

第5回はこちらをご覧ください。

 今回のkeywordは、「機会費用」、「サンクコスト」、「限界便益」、「限界費用」です。では早速「合理的な選択」について解説していきます。

選択時に考慮すべき費用

 「AかBか、どちらかしか選べない」というトレードオフがある場合でも、最終的にはどちらかを選ばなければいけません。みなさんは「コーヒー2杯かケーキ1個、どっちか」と言われた場合、どのように考えて、どちらを選びますか?

---それは時と場合によるだろう。

 コーヒー2杯を選ぶ人もいれば、ケーキ1個を選ぶ人もいますよね。ただ、どちらを選んでも、もうみなさんの頭には「好きなものを選んだ」としか残っていないでしょう。

 でも経済学では、好きなものを選んだ時のメリットだけでなく、選べずに諦めざるを得なかったものに目を向けて、それを「費用(犠牲・デメリット)」として考えます。つまり、ケーキを選んだら、コーヒーは選べないので、「ケーキはコーヒーを犠牲にして選んだ」と考えるのです。

 その「犠牲」を経済学では、「(好きなものを選ぶための)費用(コスト)」と考えています。だから、コーヒーが飲めない人よりも、ケーキとコーヒーが両方とも大好きな人の方が、選択が難しくなります。コーヒーを捨てる「費用」が高くつきますからね。

 このように、「両方選べない時」には、片方の選択肢を捨てなきゃいけないので、捨てられた方は「費用」になります。だとすると、ケーキを買う「費用」はケーキ代300円だけではなくなりますね。コーヒーを選べないというデメリットも費用に加算されますから、「300円+コーヒーを選べなかったことによるデメリット」になります。この、他の選択肢を犠牲にしたデメリット(費用)を「機会費用」といいます。

 たとえば、バイトに行くか、デートに行くかを考えてみてください。バイトに行けば、4,000円入る。一方、デートに行けば3,000円かかる。ただ、デートに行ったら、バイト代4,000円はもらえなくなります。もしバイトに行かない、つまりバイトという選択肢を犠牲にすると、4,000円もらえなくなります。このデメリットが、デートに行くことの「機会費用」なのです。

 みなさんは、意識的にせよ、無意識にせよ、この機会費用を考えています。

 その証拠に、4,000円のアルバイトを断ってデートに行く人でも、5万円のバイトが入ったらデートを断るでしょう。犠牲にするものが大きければ大きいほど、それを「蹴って」選ぶものの費用は高くつくんです。