経済の死角

本誌独占インタビューノーベル経済学者は指摘するポール・クルーグマン「1ドル100円超え、アベよ、これでいいのだ」

2013年02月14日(木) 週刊現代
週刊現代
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戦争しなければ大丈夫

 いま安倍晋三首相が推し進める経済政策・アベノミクスに批判の声が聞こえ始めている。その代表的なものが大胆な金融緩和をすると「ハイパーインフレ(急激なインフレ)」になってしまうというものだが、まったく的外れだ。

 日本と同じように金融緩和をしているここ米国でも、実はハイパーインフレの恐怖が数年前から語られ続けてきた。しかし、現実を見ればハイパーインフレが起こっていないことは誰もが知るところだ。

 さらに、私はアベノミクスが唱えられ始めてからのマーケットの動向を見ているが、日本の期待インフレ率はちょうどよい値で推移している。いままで市場が日本の物価についてデフレ予測を続けていたことを考えれば、いまは少しのインフレ期待があることで、むしろ経済にとってプラスに働いている状況になっているのだ。

 ポール・クルーグマン。2008年にノーベル経済学賞を受賞した経済学の泰斗。プリンストン大学教授を務め、米ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿するコラムがマーケットを動かすと言われるほどの影響力を持つ。

 そんな氏がこのほど本誌の独占インタビューに応じた。続けてこう語る。

 もちろん私だって、万が一ハイパーインフレになれば、国民が苦痛を味わうことになるという点に関して異論はない。しかし、日本では大きな戦争でもやらない限り、ハイパーインフレにはならないということは認識しておいたほうがいい。

 さらにアベノミクスで大規模な財政出動をやると財政悪化につながるという批判もあるが、これも現実をきちんと見ていない批判といえるだろう。

 どうしてか。それは安倍首相が大規模な財政出動を唱えても、日本の長期金利は1%未満の水準を超えておらず、政府の借り入れコストはほとんど変化していないことからよくわかる。一方で、先ほど述べたようにインフレ期待は高まっているのだから、むしろ政府の債務は実質的に減っていることになる。日本の財政見通しは、悪くなるというよりむしろ、大きく改善しているのだ。

 ギリシャのように国債危機に陥るのではないかと不安視する向きもある。しかし、ギリシャは独自の通貨を持たない国であり、日本とはまったく違う。

 仮に日本の財政問題が危ないとマーケットが判断した際にも、そのときは金利が上がるのではなく、通貨「円」が売られ、円安が進むというシナリオが起こるだけだ。円安になるのは、果たして日本経済にとって悪いことだろうか。

 安倍首相の経済政策を、樽に入った豆腐を配るような「利益誘導型」の古い経済政策に戻ったと批判する者もいる。しかし、日本をデフレから脱却させるために必要なのは、何にカネを使うかということよりもどれだけカネを使うか—つまりこれは、質より量の問題なのである。

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