企業・経営
メイドインジャパン復活はあるか!? 電機メーカーが抱える問題点とその打開策を「Amaz研究所」雨堤徹氏に聞いた
「Amaz研究所」と雨堤徹氏 (2012年7月、筆者撮影)

 1月26日から3週連続にわたって放映されたNHKのテレビ60年記念ドラマ「メイドインジャパン」では、リストラされて中国に渡った日本の技術者が現地で最新の電気自動車(EV)向けリチウムイオン電池の開発に取り組み、古巣との競争に挑む姿が描かれていた。

 このリチウムイオン電池は、1990年代に実用化され、日本の電機メーカーの「お家芸」のひとつとされてきた。そしてパソコンや携帯電話向けなどで圧倒的な存在感を示してきたが、現状では民生品向けでは韓国企業にコストと品質の両面でキャッチアップされている。

 携帯電話やパソコン向けリチウムイオン電池で圧倒的なシェアを誇ってきたのが、三洋電機だ。パナソニックが8,000億円近い巨額の投資を行って三洋電機を買収、完全子会社化した目的のひとつが、このリチウムイオン電池事業を取り込むことだった。しかし、三洋のリチウムイオン電池事業は急速に競争力を失って事業の縮小を余儀なくされ、パナソニックは買収後に同事業の減損処理を余儀なくされ、巨額赤字の一因となってしまった。

中長期戦略を描けない日本企業

 三洋電機のリチウムイオン電池事業のキーマンで、ビジネス開発統括部長の要職に就いていたが、パナソニックとの統合を嫌って2010年に退社、独立したのが技術者がいる。雨堤徹氏(54)だ。

 雨堤氏は現在、「Amaz技術コンサルティング合同会社」(兵庫県洲本市)の代表を務めている。自前で資金を調達し、昨年秋に8人を新規雇用して「Amaz研究所」を本格稼働させたばかりだ。電池製造の前工程・後工程の設備や安全性を評価する試験装置などを備えた本格的な開発拠点であり、リチウムイオン電池の研究開発に現地現物で取り組んでいる。現在、世界中の企業から引き合いが来ている。

 リチウムイオン電池を含め日本の電機産業がなぜ急速に競争力を失ったのか、復活のためには何が必要か、雨堤氏に聞いた。

---三洋電機を買収したパナソニックのリチウムイオン電池事業の競争力が落ちていますが、その理由をどう見ますか?

 市場の実態に合った事業計画ができていないように見えます。そしてコストダウンばかりが優先されているようにも感じます。そのため、材料メーカーが新しい技術の提案を持って行っても見向きもしないそうです。

 こうした材料メーカーが海外の企業に新しい技術を提案し、それを採用した企業が力を付けているのです。産業全体としてのモチベーションが下がっているわけです。コストダウンは非常に重要なことですが、それがもの造りの中心的な考えになってはいけません。

 電池だけではなく日本のメーカーが技術的に韓国企業に負けているとは思いませんが、ビジネスにおいては「負け戦」になっていると思います。その理由は、日本企業が戦略で負けているからです。

 韓国勢はまず、価格を下げて圧倒的なシェアを押さえた後に価格決定で主導権を握る傾向があります。中長期の戦略があって非常にしたたかです。それに比べて多くの日本企業は目先の利益計画の達成だけに目がいっていて、中長期戦略は形だけに留まっているのではないかと思います。

---リチウムイオン電池に限らず、日本の電機メーカー、特に家電メーカーは総崩れです。その要因は何でしょうか?

 製造業なのに、技術戦略を描けない人たちが経営のトップにいることが問題です。中国のハイアールに売却した三洋電機の洗濯機や冷蔵庫の事業も、技術水準は高かったのですが、営業やブランド構築などの面で戦略性がなかったのではないかと思います。先ほど申し上げたように、今後、どの商品や技術に注力していくのか、製造業では中長期の戦略がないと競争に勝てません。

 メーカーの場合、次の収益源を創出していくために常に「種」をまいておかなければなりません。人材と資金に余裕のある大企業だからこそ、そのリスクが取れるのです。リスクを取るためには、戦略のメリハリが必要です。

 しかし、日本の大企業では多くの経営者がリスクを避け、他社に追従して一律に投資したり、一律にコストを削減したりする。これではダメです。経営者が経営判断していませんし、する能力もないのです。日本の家電メーカーが再生するためには、経営者を総替えするくらいの決断が必要でしょう。そもそも大赤字を出した社長が会長に「出世」できること自体がおかしいです。

 標準化という欧米が造ったルールにまんまとはまってしまったことも競争力低下の一因だと感じています。「ISO」や「シックスシグマ」などに必要以上に力を入れてきたことは、その典型的な事例です。こういった標準化で儲かるのは、監査に来る欧米系のコンサルティング会社ぐらいでしょう。他国は適当にやっていますが、日本人は几帳面すぎるほど規則を守ります。ISOを取得・維持するために担当の人材を抱え、それが間接部門のコストを上げる要因になっています。

 そもそも競争力の源泉である技術や営業ノウハウなどを標準化しようと考えることが間違っています。標準化できるのであれば、それは誰でもできるということですから、自ら競争力を放棄することと同じです。三洋電機時代、標準化に関する社内会議には、参加しなかったことが多かったと思います。

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