田原総一朗 × 谷淳也さん(クレディ・スイス プライベート・バンキング本部長) Vol.3
「10億円以上の資産運用だからこそ、時間とお金と労力をかけられる」

[左]谷淳也さん(クレディ・スイス プライベート・バンキング本部長)、[右]田原総一朗さん(ジャーナリスト)
※この対談は2012年10月に行われたものです。一部、当時の市場情勢を反映した発言もありますが、そのまま掲載しております。

Vol.2はこちらをご覧ください。

顧客の満足と納得がクレディ・スイスの特徴

田原: クレディ・スイスは、自社では商品は作らないんですか?

谷: われわれのプライベート・バンキング部門ではとくに作っていないんです。同じ会社のなかでアセット・マネジメントという部門があって、そこが運用しているヘッジファンドとか、そういうものは売りますね。

 ただ、われわれの目線はお客さまなので、プライベート・バンキング部門はあくまで独立した立場をとっています。たとえば他の部門が供給する商品と、全然別の他社、ゴールドマン・サックスでもバークレイでもどこでもいいんですが、そこが提供している商品があった場合に、同じテーブルの上に並べてどちらがパフォーマンスが良いか、ちゃんと比べて、より良いものをお客さまに勧める、そのプロセスは徹底しています。

田原: さっきの5、6%の利回りというのは、プライベート・バンキングでいうと高いほうですか、低いほうですか?

谷: それはどこにいってもそんなものですね。どこそこのプライベート・バンクにいったら夢のように儲かるというような話があったとしたら、それは嘘です(笑)。

田原: じゃあ、クレディ・スイスのプライベート・バンクの特徴は何なんですか?

谷: うちで運用していただくと納得ができる、安心ができる、というところですね。

田原: 具体的にどこが強いんでしょう?

谷: それはまさに先ほど言ったプロセスがどれだけ実践されているか、というところですね。実際にお客さまが「10億円できたから、これを運用したい」と言ってこられたとします。そういうときに、われわれの営業マンがどう反応するか、そこでもうすぐ違いが出ます。

 私もいろいろな外資系を見てきましたが、まあ外資系でも日系でも大体みんな「わかりました、少しお待ちください、明日またお話をします」と言って帰るわけですよ。それでどうするかと言うと、今、自分たちのプロモート(販促)している商品があって、出来合いのストーリーがあるわけです。それをそのまま持っていって「これはどうですか。これこれこうで素晴らしいんです。こうやるとリスクもありますけれども、こういうリターンがあります。それがお好みでなければこういうのもあります」というふうにやるわけです。それが普通の営業ですね。

 でも、われわれはそういうことはやりません。われわれは、「あなたにとってその10億円は何ですか? それは100億円のなかの10億円なんですか? それとも10億円で全部なんですか? あなたに家族はいますか? あなたは結局その10億円を使って人生をどうしたいんですか?」などとできるだけ詳しく伺います。そうすると、いろいろな人がいますよ。極端な例では、その10億円で社会貢献がしたい、と。それはちょっとわれわれの仕事ではありませんけれども、そういうところに紹介することはできますよね。

田原: 社会貢献したいけれども、そのためにはもう少し20億円くらいにしてからはじめたい、という人もいるわけね?

谷: そういう方もいらっしゃいます。それはバランスですよね。家族のことと自分のことと社会貢献のバランスをとりたいとおっしゃるわけです。それでお話をして、大体皆さん運用のプロではありませんから、じゃあこういうこともありますね、と。そこでお勉強会を始めるんですよ。こういう世界の潮流があるとか、そもそも資産運用というのはどういう考え方をすべきなのか、とか。

田原: それは一人ひとりを相手にやるわけ?

谷: そうです。だからたとえば1000万円のレベルの人には対応できないんです。それはコスト的に言って無理ですから。10億円以上の資産運用だからこそ、時間とお金と労力をかけられる。その代わり、徹底的にやるんですね。今年いくつかアドバイスが成功して喜んでいただいたお客さんの例では、具体的な商品の話を始めるまでに3ヵ月かかりました。その間に10回くらいミーティングしています。

田原: 10回くらいのミーティングというのは、会社に来てもらうんですか、それとも向こうに行くんですか?

谷: 両方あります。当社に来ていただくと、もちろん営業担当者もいますが、スペシャリストとしていろいろな専門家もいるわけです。そうすると、営業担当者の説明だけではなくて、たとえば「こういうリサーチをしている人もいますので、それはスペシャリストから話を聞いたほうがよりわかりやすいですよ」ということもありますね。さすがに10人も連れ立ってお客さまの家に伺うわけにもいきませんから(笑)。

田原: そうすると、10億円以上の資産家が2万人だとすると、あんまり発展の余地がないんじゃないですか?

谷: そんなことはないですよ。10億円ちょうどの人もいますけれども、100億円とか200億円の人もいますし。

田原: いや、だからそういうお客さんはわかっているわけだから、新たにお客が増えることはないわけですよね?

谷: いや、われわれの知らないお客さまもたくさんいますから。それは外資系のまだまだこれからのところで、この間HSBCという会社の日本におけるプライベート・バンキング業務を買収したんですが、そこの日本におけるプライベート・バンキング部門の人たちを含めても、今、営業マンの数が精々50人くらいですからね。

田原: こういう話をするのは不都合があるかもしれないけれども、もっと言うと、クレディ・スイスは2、3万人のうちのどのくらいをつかんでいるんですか?

谷: ある程度リレーションシップができているところでいうと、それでも10%近くは何だかんだいって関わりができているという感じですね。

田原: じゃあ、まだ2、3万人のなかには、どの金融機関とも取引をしていない人もいるわけね?

谷: いや、どこかしらの銀行とは取引があるんでしょうね。ただ、プライベート・バンキングという形のサービスを受けていらっしゃらない方は多いと思いますよ。

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