ジョセフ・スティグリッツ「もっとも価値ある資源である若者を浪費するな!『格差』が米国経済の回復を妨げている」

 オバマ大統領の再選についてはロールシャッハテストのように、種々な解釈ができる。今回の大統領選では、民主共和両陣営が、私が極めて憂慮している問題について議論した。すっかり根付いてしまったような経済の沈滞、そして、結果のみならず機会までも不平等という1%と残り99%の人々の間で拡大する格差。私には、これらの問題はコインの表裏に見える。

 すなわち、世界大恐慌前からこのかた最高水準という不平等を引きずったまま、米国が短期間に力強い経済回復を実現するのは難しく、懸命に働いた見返りに豊かな生活を約束するアメリカンドリームは、徐々に死につつある。

 政治家は概して、増大する不平等と緩慢な回復をバラバラの現象として話す。しかし事実は、二つは絡み合っているのだ。不平等は経済成長を押さえつけ、制限し、妨げる。

 自由市場志向の雑誌、英エコノミストさえ10月号の特集で論じたように、この不平等の規模と性質は米国にとって深刻な脅威を意味しており、われわれは、何かがすごく間違ってしまったことを知るべきなのだ。しかし、40年にわたる不平等の拡大と大恐慌以来の最大の経済不況にもかかわらず、それに何らの対処もしてこなかった。

5分の一の子供たちが貧困状態---先進国中でも常軌を逸した米国

 不平等が回復を押さえこんでいる原因は4つある。最も直接的な原因は、米国の中間層が、歴史的に成長の原動力となってきた消費者支出を支えきれないほど弱体化したということだ。

 トップ1%が2010年度の所得の伸びのうちの93%を獲得する一方、所得を蓄えるよりは消費に回す確率が高く、ある意味では、真の雇用創出の元である中間層世帯の家計所得は、インフレ調整後、1996年より少なくなっている。金融危機前10年の成長は、最下層80%の消費者がその所得の110%を消費することの上に実現された、持続不可能なものであった。

 第2は、1970年以降の中間階級の空洞化。これは、1990年代にほんの一時期中断したことがあっただけだ。空洞化は、中間階級が自分や子供たちを教育し、ビジネスを起こしたり拡大したりして将来に投資することが不可能であることを意味している。

 第3に、中間階級の弱体化は税収を抑える。特に、最上層の連中が納税逃れと、ワシントンを動かして税制上の優遇措置を得ることに巧妙なことが、その理由だ。年収40万ドル以上の個人と、年収45万ドル以上の世帯に対して、クリントン政権レベルの限界所得税率を回復させるという最近の控えめな合意も、焼け石に水だ。

 ウォールストリートの投機で手にした利益に対する税率は、他の収入に課せられた税率よりもはるかに低い。税収入が少ないということは、政府が、長期の経済力回復には必要なインフラ、教育、研究、健康などへの投資をできないということだ。

 第4に、不平等は、より頻繁かつより厳しい好不況の波と関係があり、経済をさらに乱高下させ脆弱なものにする。不平等の直接の結果として金融危機が起きたわけではないが、深刻な所得と富の不平等の直近の例である1920年代が、29年の大暴落と大恐慌によって終わりを告げたことは決して偶然の一致ではない。IMFは、経済的な不安定と経済的な不平等の間には体系的な関連性があると言及したが、米国のリーダーたちはその教訓を理解しなかった。

 よく働き能力があれば誰でも「一旗揚げられる」という米国の能力主義的理想に大きく反するこの天井知らずの不平等の意味するところは、限られた資力しかない両親のもとに生まれた者は、自分の可能性を決して実現できないということだ。

 カナダ、独、仏、スウェーデンなど、他の富裕な国の子供たちは米国の子供たちに比べて、両親の生活水準を超える機会に恵まれている。米国の子供たちの5分1以上は貧困層に属し、これは先進経済国中でも下から二番目、ブルガリア、ラトビア、ギリシャにも劣る。

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