中国海軍艦船レーダー照射事件は、国家指導部の「意思」による挑発と見るべきか!?
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 国内でもごく一部の対中強硬派が言い募っていた「日中尖閣海戦」は煽動が過ぎると思っていたが、現実味を帯びてきた---。小野寺五典防衛相が2月5日夜に発表した中国海軍艦船による火器管制用のレーダー照射事件のことである。

 防衛省によれば、先月30日午前10時頃、東シナ海の公海上-尖閣諸島北方約130キロ-で海上自衛隊第7護衛隊(司令部・舞鶴)の護衛艦「ゆうだち」が航行中に、約3キロ離れた中国海軍のフリゲート艦「ジャンウェイⅡ級」からレーダー照射を受けたのだ。これは、国際基準からしてもまさに武力威嚇である。

 レーダー照射とは、「艦船や航空機を攻撃する際に、火器管制用レーダーを使って標的に照準を合わせる行為。反射して戻ってきたレーダーの電波に基づいて標的の位置を特定し、ミサイルを撃つ。ロック・オンと言われる」(『読売新聞』6日付朝刊の解説記事)ということだ。

 さらに、同19日午後5時頃にも、別のフリゲート艦「ジャンカイⅠ級」から海上自衛隊第6護衛隊(司令部・佐世保)の護衛艦「おおなみ」の搭載ヘリ「SH60」が警戒飛行中にレーダー照射を受けていた可能性があるという。

 なぜ、事件発生から6日も経ってから公表したのか。先ずはそれよりも、なぜこの時期、中国は日中軍事衝突につながりかねない危険な行動に打って出たのか、の理由である。

尖閣諸島は中国に返還される可能性もある

 1月18日午後(日本時間19日未明)、ワシントンで行なわれた日米外相会談が、その謎を解く鍵と言えるのではないか。ヒラリー・クリントン国務長官(当時)は岸田文雄外相との会談後の会見で、「尖閣諸島の施政権は日本にある」と発言した。「尖閣諸島の潜在的主権は日本にある」とは言わなかった。

 この「施政権」という言葉が曲者である。第3次佐藤栄作内閣下の1972年5月15日の「沖縄返還」を想起すれば分かるように、同年1月の佐藤首相とニクソン大統領の日米首脳会談で米国は沖縄の施政権を日本に返還することで合意したのである。

 では、このクリントン発言をどう解釈すればいいのか。穿った見方をすれば、オバマ米政権は中国の挑発行為を批判しているが、実は、東アジア情勢の推移如何によっては将来、尖閣諸島は中国に返還される可能性もある、という対中メッセージだったのではないか。

 そして、そのメッセージを受けて"図に乗った"中国側が日本に対して挑発行動に踏み切ったという見方である。それはつまり、習近平中国共産党総書記ら国家指導部の制御が効かなかった軍部・海軍の「暴走」ではなく、国家指導部の「意思」による挑発と見るべきではないかというものだ。

 とすると、得心がいくことがある。安倍晋三首相の外交アドバイザー、谷内正太郎内閣官房参与(元外務事務次官・昭和44年入省)がこの間、水面下で事務次官時代以来の知己である戴秉国国務委員(外交担当)と接触、対中関係修復のための日中首脳会談の早期実現を働きかけていた。

 だが、中国側から芳しい反応がないどころか、3月の全国人民代表者会議で引退する戴秉国の後任に対日強硬派の楊潔箎外相の起用を決めたのである。我が国の外交当局が期待していた知日派の王毅・党中央台湾弁公室主任(元駐日大使)の起用は実現しなかった。この人事は、尖閣問題で絶対に譲歩しない、という中国側の意思表示である。

 5月下旬には韓国・ソウルで日中韓首脳会談が予定されている。今月25日に朴槿恵大統領が誕生するが、彼女がホストとなる同首脳会談に3月の中国全人代で首相に任命される李克強・現常務副首相が出席する。安倍首相にとっては最初の中国トップとの会談となる。それまでに中国の軍事的挑発がさらにエスカレートするようなことになれば、日中韓首脳会談が流れることもあり得る。

 それはともかく、中国艦船レーダー照射事件発生から6日後の公表は、実は米側の真意を探るのに時間がかかったからだ、という見方をする向きがあるのだ。穿ち過ぎだろうか。果たして、22日に予定される日米首脳会談で安倍首相は、オバマ大統領に何を求め、何を与えるのか、注目したい。

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