原発内での相次ぐ「クロ判定」
「可能性が否定できなければ」 原子力規制委が厳格に判断[活断層]

敦賀原発の断層問題が話し合われた原子力規制委員会の評価会合で発言する田中俊一委員長(右)。左は島崎邦彦委員長代理=東京都港区で12年12月10日

 原子力規制委員会が、原発の敷地内で活断層の存在を次々と指摘する「クロ判定」が続いている。昨年12月、日本原子力発電敦賀原発(福井県)の原子炉建屋直下にある断層を活断層と判断。続いて東北電力東通原発(青森県)でも敷地内にある複数の断層を活断層とみなした。なぜ、今になってこうした問題が浮上しているのか。

 日本列島の地下には、地球を覆うプレート(岩板)の活動の影響でさまざまな力がかかっている。この力に耐えきれず岩盤や地層がずれる現象が地震で、ずれた部分を「断層」と呼ぶ。うち、最近まで地震が繰り返し起き、今後も動くと予測される断層を「活断層」という。国内には約2000の活断層があるとされる。

 原子炉建屋の直下に活断層があると、揺れるだけでなく地面もずれるため、建屋が傾いて大事故に至る恐れがある。このため、国は活断層の真上に原子炉建屋を建てるのを認めていない。

 電力会社は原発を建設する前に、敷地内や周辺の地質を調査。「活断層はない」と国に報告し、国は専門家を集めて安全審査したうえで原発設置の許可を出してきた。国策民営のもと、原発の計画は進み、70年代には建設ラッシュを迎えた。

 活断層のリスクが注目を集めたのは、95年に阪神大震災(マグニチュード7・3)が発生してからだ。原発の耐震設計審査指針(耐震指針)の見直しは01年から始まったが、専門家同士で意見が対立し、改定されたのは阪神大震災から11年たった06年だった。

 この改定に伴い、国は全国の原発に周辺の断層評価を見直し、耐震性を再検討するよう指示。しかし、電力会社は消極的でなかなか進まず、大半の原発で最終報告書は出されないまま、11年3月に東日本大震災が起きた。

 震災後の同年4月には福島県南部で、国や東京電力が動かないとしてきた湯ノ岳断層など複数の断層が動く地震が発生。旧経済産業省原子力安全・保安院は同年11月、断層評価の見直しを本格化させた。

 保安院は翌12年4月、敦賀原発を専門家を交えて現地調査し、原子炉建屋直下を通る断層に活断層の疑いが浮上。これを受け、保安院は7月から全原発を対象に敷地内の断層を総点検した。そして、敦賀に加え、関西電力大飯、美浜(福井県)▽日本原子力研究開発機構の高速増殖原型炉もんじゅ(同)▽北陸電力志賀(石川県)▽東北電力東通(青森県)の計6施設について、再調査を電力会社に指示した。9月に発足した規制委はこの6施設を優先的に現地調査する方針を表明した。

活断層「40万年前以降」に拡大

 規制委はまず、過去に安全審査に関わった経験がない専門家を、日本活断層学会など関係学会に推薦してもらい、調査団を作った。これまでの安全審査のメンバーの人選は省庁主導で「事業者に甘い」という批判もあったためだ。調査団は、これまでに大飯、敦賀、東通の3原発を現地調査。敦賀と東通原発については12月に「活断層」との判断を下した。

「スピード判決」に至った背景の一つは、活断層の定義の拡大だ。過去に動いた断層は、地下にかかる力の方向が現在と同じ状態なら、将来も動く活断層であると考えられている。規制委は断層が「40万年前以降」に動いたなら活断層とみなす方針。これに対し06年改定の耐震指針は「12万~13万年前以降」、それ以前は「5万年前以降」だった。

 活動年代は地層に含まれる火山灰などから推定するが、対象範囲を広げることでより、判断しやすくするねらいがある。敦賀原発2号機直下を通る断層を活断層と判断するにあたっては「12万~13万年前」に動いたことを直接示す証拠はなかった。しかし、定義拡大により、前後の状況から「少なくとも十数万年前以降に動いた可能性が高い」と判断できた。

 もう一つの背景として、旧保安院時代に比べ、活断層認定に対する考え方が変わったことが挙げられる。これまでは、活断層と断定できる明確な証拠がない限り、電力会社は可能性を否定し続け、国も容認してきた。しかし、規制委は「可能性を否定できなければ、活断層とみなす」とする国の基準を厳格に適用。事業者側が活断層の可能性がないことを立証できない限り、活断層とみなす考えだ。

 東通原発の敷地内を通る断層を巡る調査団の審議で、規制委の島崎邦彦委員長代理は東北電に「活断層の可能性はないということを示してほしい」と迫った。

 こうした変化に対し、事業者側は「拙速」「科学的に十分な説明がされたとは言えない」と反発を強めている。日本原電は、敦賀原発の活断層認定の判断根拠を説明するよう求める公開質問状を規制委に提出した。こうした経緯を受け、規制委の調査団は、判断根拠をまとめた報告書を作成、理解を求める。報告書を基に、規制委は今後、再稼働の可否について判断を示す。

 敷地内に活断層があると判断された原発の命運は、その活断層の位置によって異なってくる。

 敦賀、志賀、美浜原発ともんじゅは、問題の断層が原子炉建屋直下を通る。敦賀原発のように活断層とみなされた場合、事業者は活断層がないことを新たな証拠を見つけて立証しない限り、規制委は再稼働を認めない。廃炉は事業者判断だが、再稼働できないのなら所有するメリットはなく、廃炉を迫られる可能性が高い。

 一方、全国で唯一稼働している大飯原発では問題の断層が、運転中の3、4号機に冷却用海水を送る重要施設「非常用取水路」を横切る。活断層と判断されれば、規制委は運転停止を求める方針。取水路の付け替えなど大幅な耐震性の見直しを迫られるため、停止期間の長期化は必至となる。

 東通原発では、原子炉建屋から最短約200メートルにある敷地内の複数の断層について、規制委の調査団が活断層と認定した。原子炉建屋の至近距離にある活断層による揺れの規模を正確に予測するのは、現時点で「適切な手法がない」(島崎規制委委員長代理)という。ただし、規制委は今後の技術開発で適切な手法ができ、十分な余裕をもって耐震対策が講じられた場合には、稼働を認める余地を残す方針だ。

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