企業・経営
驕る平家は久しからず---フタバ産業元社長の逮捕にみる名門・優良企業の油断と驕り
フタバ産業のHPより

 2月6日、トヨタ自動車グループにとっては衝撃的なニュースが流れた。系列企業のフタバ産業(本社・愛知県岡崎市、東証一部上場)元社長の小塚逸夫氏(69)が有印私文書偽造・同行使の疑いで愛知県警に逮捕されたのだ。

 容疑は、2008年にフタバ産業の出資先だった企業への貸付金約15億円について、伝票を偽造し、別会社への振り込みを装ったというものだ。報道によると、小塚容疑者は容疑を否認しているという。

 フタバ産業は逮捕を受けて、自社ホームページに「重大なことと受け止めています。本件につきましては、関係各方面の方々に深くお詫び申し上げます」などとするコメントを掲載している。

絶頂期の油断と驕り

 トヨタグループにとって衝撃的だと言ったのは、このフタバ産業という会社は、かつて、トヨタの系列団体「協豊会」の会長を務めたほどの名門・優良企業だったからだ。自動車用マフラーを主力とするため、一般の人にはあまり知られていないが、自動車産業に関わる人なら誰でも知っている会社である。

 そして、このフタバ産業は、ここ10年のトヨタの繁栄、あるいはリーマンショック後の落ち込みや創業家派と非創業家派の対立など、一時の迷走を振り返るうえでは欠かせない企業でもある。

 実は、NHKテレビ60年ドラマ「メイドインジャパン」の「原点」となった拙著『メイドインジャパン 驕りの代償』(NHK出版)の第6章「トヨタの栄枯盛衰」でも、小塚氏が関与したフタバ産業の「事件」について書いた。それをここで紹介する。

〈 トヨタの業績が沈み始めた2008年10月には系列部品メーカーで大きな不祥事も発生した。自動車用マフラー最大手、フタバ産業(本社・愛知県岡崎市)が利益を水増ししたとして、決算の虚偽記載で東京証券取引所の監理ポストに入った。

 フタバ産業はトヨタの系列団体「協豊会」の会長を務めたこともある名門で、東証一部上場の優良企業だった。この不祥事で2008年初めには3000円近くあった株価が一気に180円にまで急落した。フタバのある社員は事情をこう説明した。

 「海外投資は石橋をたたいても渡らない慎重さがありましたが、顧客への要望に対応するため、方針が大きく変わりました。トヨタの系列の中で当社ほど変化したところはないと思います。この10年の間に欧米や中国など海外に一気に14工場も建てました。その結果、帳票の管理が甘くなり、本来なら一括で経費処理するところを減価償却扱いにしてしまうミスを重ねました」 〉

 トヨタやその系列企業は手堅い経営を続け、着実に利益を積み上げてきたが、いつの間にか身の丈を超えた膨張が始まり、経営の絶頂期に油断や驕りが生じていた。その象徴のひとつがこの「フタバ産業事件」だったのである。決算虚偽記載などの責任を取り、小塚氏は2009年3月31日付で社長を引責辞任していた。

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