世界一わかりやすいスティグリッツの経済学
第5回 「人生はトレードオフの連続(1)」

第4回はこちらをご覧ください。

 ここまで、個人も企業も自分の希望に従って、「合理的」に自分の行動を決める、ということを説明してきました。個人は自分の効用(満足感)、企業は自社の利益を大きくしようと、ありとあらゆる選択肢を比較して、ベストなものを選んでいるのです。

 今回のkeywordは、「機会集合」、「予算制約線」、「時間制約線」です。

---とはいえ、自分の生活を振り返ってみると、「理想」とはかけ離れた状態だが? 経済学がおかしいのではないか?

 そう考える人も多いでしょう。たしかに、経済学が想定している世界は、現実にはあり得ません。前回は、「完全情報」の前提にズレがあることを指摘しました。経済学では、誰もがありとあらゆることを知っている、と想定しています。これは現実にはあり得ませんね。

 しかし、現実の社会が「理想の状態」にならない理由は、それだけではありません。なぜ都度「ベスト」な選択肢を選んでいるのに、理想の状態にならないかというと、経済には「制限」があるからです。今回は、その「制限」について説明します。

機会集合とは?

 経済学は、誰でもみんな、その都度あり得る選択肢の中から、一番いいものを選んでいるとしています。逆に考えると、その時に「選べない選択肢」もあるのです。

---どういうことか?

 たとえて言うならば、レストランで「売り切れ」になっているメニューです。自分の好みとお腹のすき具合から考えて、大盛りカレーライスを注文しようと決めていたとしても、売り切れになっていたら注文できませんね。注文できるメニューから選ばざるを得ないのです。この「注文できるメニュー」「選べる選択肢」のことを、「機会集合」といいます。

 「機会」とは「チャンス」のことですから、「選ぶチャンスがある選択肢」ということですね。また選択肢は1つじゃなくて、複数あるケースがほとんどですから、「選択肢の集まり」と言う意味で「集合」と書いています。まとめると、「機会集合」とは、「選ぶチャンスがある選択肢たち」のことです。

 さらにまた、「選べる」ということを、経済学では「利用可能」と表現します。つまり、「機会集合」=「利用可能な選択肢の集まり」という意味ですね。

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