現代新書
精神科医が説く「子育ての『常識』のウソ」
『反教育論──猿の思考から超猿の思考へ』著者・泉谷閑示インタビュー

2月15日発売の講談社現代新書で、『反教育論──猿の思考から超猿の思考へ』という刺激的なタイトルの本を出す精神科医の泉谷閑示さん。
 内容もタイトルに負けず劣らず刺激的。「好き・嫌いの大切さ」「道徳は悪を生む」「基礎神話の誤り」「成長に不可欠な嘘」「早期教育の危険性」「あとで苦労しないためという考え方の誤り」など、従来のしつけ・教育の常識を疑いつつ、ルソー、ニーチェ、バートランド・ラッセル、エーリッヒ・フロム、ピーター・ブルック、岡潔など、さまざまな先達の言葉を引きながら、本当の人間の思考とは何か、人間らしく生きるとは何かを考えさせる熱量に溢れた本となっている。
 その泉谷さんが本書を著した動機とは?

しつけや教育で「去勢」しないでほしいという思いがこの本を書かせた

──『反教育論』、かなり挑発的なタイトルですね。そしてタイトルもさることながら、内容も、従来の子育て、教育の「常識」に真っ向から反対するという、熱いものなんですが、どんな気持ちで書かれたのですか?

泉谷 一言で言えば、怒っているんです。私の仕事は精神療法です。私のクリニックには毎日多くの人が、うつになったり、パニック障害になったり、いろいろと精神的に行き詰まってやってきます。

 では、その原因は何なのか。いろいろと話を訊いていくと、結局はその方が受けたしつけだったり、教育の問題に行き着くんです。

 毎日毎日一対一でクライアントの方々のセラピーをしていても、キリなくそうした状況がつくりだされてくる。そんな日々を繰り返すうちに、私自身の内部からふつふつと、「もうこれ以上、犠牲者をつくりだすのをやめてくれ」という想いがわきあがってきたんです。

──そうしたクライアントというのは、ここ2~3年、増えてきているのでしょうか?

泉谷 2~3年というより、もう少し長いスパンですけれど、とくに最近、生きるうえでのエネルギーが少なくなってきている人が増えているという印象を持っています。

 以前は、私がセラピーで何かを言うと、それに絡んでくるというタイプの人が多かった。ところが最近は絡まれることがめっきり少なくなって、むしろ、ひっそりと消えていくというタイプの人が多くなった。

 そうした人を見ていると、どこか生き物として衰弱してきている感じがしてならないんですね。

 もちろん彼らもセラピーを通じて、本来の自分を取り戻すことができれば、以前よりはるかに元気になっていきます。その変化は、これがあの人かと見違えるほどです。

 そうしたクライアントの方たちを見ていると、もともと生まれながらにエネルギーが少ない人というのはほとんどいなくて、成長の過程でそうさせられてしまったらしいということがわかってきたんです。

泉谷閑示(いずみや かんじ) 1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒業。精神科医。精神療法を専門とする泉谷クリニック(東京・広尾)院長。おもな著書に、『「普通がいい」という病』(講談社現代新書)などがある。

──つまり、彼らが受けてきたしつけや教育が原因であると。

泉谷 ええ。精神分析的な言葉で言えば、しつけや教育によって「去勢」されてしまった。それでもなんとか適応して生きてきたけれど、あるところでもう動けなくなってしまった。そこで私のところにやってくる。

 だから私は、「もう去勢するようなことはやめてください」ということが言いたかった。それが今回の本を書こうと思った大きな動機です。

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