メディア・マスコミ
安倍首相がFacebookで噛み付いた「ねつ造記事問題」!記者個人がリスクを背負わない段階で政治家に負けている現実をマスコミは直視せよ
安倍首相のFacebookページより

 「マスゴミ」「マスコミは最悪」「ひどいねつ造記事」---。

 ネット上でマスコミ批判が沸騰している。きっかけは、週刊誌『女性自身』が2月12日号に掲載した「安倍昭恵さん、首相公邸台所改装費に税金一千万円」と題された記事に、安倍晋三首相が自身のフェイスブック(FB)で噛み付いたこと。

 「女性自身2月12日号の記事を読んでびっくりいたしました」から始まる安倍FBの投稿ではまず記事の内容を簡単に説明。昭恵夫人が、今度は前回以上に食事の面から夫をサポートしていかなければとの思いから、首相公邸の台所を1000万円(税金)かけて改装するよう指示しているというのは「とんでもない捏造記事です」としている。

 「私も昭恵も首相公邸のリフォームはおろか、ハウスクリーニングさえ依頼した事はありません」とし、「編集された方、どうかご訂正をお願いします」と書いている。

「情報咀嚼力」が問われる時代

 5日現在、この投稿に約3万3000人のFBユーザーが「いいね!」ボタンで反応し、4000件以上のコメントが付けられている。コメントの内容を見ると、ほとんどが週刊誌やマスコミを批判するもの。中には、「マスコミの報道を規制せよ」といった主張も踊っている。

 官邸周辺に取材してみると、昭恵夫人が1000万円かけて改装を指示した事実はないようで、女性自身の「自民党関係者」というニュースソースもあやふやなようだ。どうやら安倍首相側に軍配が上がっている。

 ところが、この騒ぎを、大新聞はほぼ無視している。「もともと女性誌なんて、ねつ造記事まがいが横行している」と、はなから相手にしていないのである。だが、FB上の反応をみると、当の女性週刊誌や原稿を書いた記者への批判というよりも、マスコミのあり方の方に批判の矛先が向いているのだ。

 こうした問題が表面化するたびにマスコミ全体への批判が、間欠泉のように噴出するのは、マスコミがきちんと国民の期待に応えていないからだろう。国民にいとも簡単に「マスコミはダメだ」「週刊誌は平気でウソを書く」と言わせてしまうところに、今のマスコミが抱える問題の大きさが表れている。

 政治家がFBやツイッター、ブログなど新しいメディアを活用するのは良いことだ。これまでになかった国民との直接対話の機会が大幅に増えた。マスコミという媒介(メディア)を通さずに、直接、情報や主張を伝達できるようになったのは画期的な事だ。

 だが、同時に、受け手である国民の側に大きな課題が課せられることになっているのではないだろうか。これまで以上に情報の真偽や内容を吟味する目、いわば「情報咀嚼力」が問われるようになっているのだ。

 安倍首相は自民党総裁になる前からメルマガなどを活用し、様々な情報発信をしてきた。FBで情報を受け取っているフォロワーは21万人に達する。安倍氏の情報発信はちょっとしたマスコミに劣らない影響力を持っている。

 2011年の東京電力福島第一原子力発電所事故の直後、官邸周辺からは「菅直人首相が、渋る東京電力を説き伏せて海水注入を指示した」というストーリーが流れ、マスコミもこぞって「首相の英断」と報じていた。

 ところが、5月20日になって安倍氏が自身のメールマガジンで「海水注入の指示は全くのでっち上げ」と配信。「首相は間違った判断と嘘について国民に謝罪し直ちに辞任すべき」とした。

 この安倍氏の"スクープ"がその後の、菅首相と東電のやり取りを巡る大混乱のきっかけになった。実は菅氏は逆に、海水注入を止めるよう東電に指示していたのではないか、という疑義が生じたのだ。国会事故調などの報告書では、海水注入の中断は、首相が指示したわけではなく、官邸詰めの東電幹部が慮った結果だった、ということになった。

 菅氏も首相時代に官邸での会議をネット中継し、ツイッターで質問を受ける試みまで実行した。もはやFBやツイッターを使った情報発信は政治家の必須アイテムになっている。

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