ライフ
特別対談 佐々木俊尚×島本久美子
一枚の写真が企業の運命を決める時代 【前編】

[左]佐々木俊尚さん(ジャーナリスト)、[右]島本久美子さん(ゲッティ イメージズ ヴァイスプレジデント兼ゲッティ イメージズ ジャパン代表取締役)

誰でも世界中に自分のコンテンツを輸出できる時代

編集部: こんにちは。今回は、ジャーナリストの佐々木俊尚さんと、ゲッティ イメージズ ジャパン代表取締役の島本久美子さんに対談をして頂きます。

 先日、ジャーナリストの大谷和利さんが『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか 一枚の写真が企業の運命を決める』という本を書かれまして、ビジネスの成功のためには写真や動画といったビジュアル要素が強力な武器になる、とおっしゃっています。この本では、ゲッティ イメージズさんについてもかなりの分量を割き、島本さんやアメリカの本社の経営陣にもインタビューして、ビジュアルを駆使したビジネスの戦略とノウハウを語って頂いています。

 そのように、写真や動画によって、会社も個人もいかにチャンスを掴んで成功を目指すことができるのかという点を中心に、お話を頂ければと思います。

佐々木: この『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』という本、面白く読みました。確かに日本企業は「ビジュアルイメージが大事だ」と言いながら、ウェブサイトを見るとお粗末なのが多い。大事にしていないケースが圧倒的に多いと思います。

 ビジュアルも含め、そもそもウェブというのは動的なものですよね。なのに、なぜか日本企業の公式ウェブサイトの大半は、昔の紙の「会社案内」と変わらない。紙をそのままウェブ上に移し替えただけですよ。

 トップページに「社長のメッセージ」があって、次に「商品案内」があって、会社のビルの写真か何かと一緒に「沿革」が書いてあって・・・という。それ以上のものは何もない、というのが大多数の企業でしょう。

 ただし、IRをやらなきゃいけないということで、IRのページだけは妙に充実している。と言っても、PDFで大量にデータが置いてあるだけなんですけど(笑)。

 それに比べて、この本にも書かれているように、たとえばコカ・コーラのようなグローバル企業のウェブというのは、ものすごくイメージを大事にしていますよね。写真一つ取っても、時間とコストをかけてしっかり撮影しているんだなというのがよくわかる。

 そういう観点で見ると、ビジュアルについて我々はもっときちんと捉え直すべきだし、考えなきゃいけないことはたくさんある。この本を読んでそう感じました。

 そういう部分で企業のビジネスをサポートし、それによって自らのビジネスも成長させているのがゲッティ イメージズですが、ただ、ゲッティ イメージズと言っても知らない人もいるのではないかと思うので、まず、その辺のお話から伺えますか。

島本: わかりました。ゲッティ イメージズは、簡単に言いますと、基本的には「B to B」で、オンラインで主にビジュアルコンテンツを商業目的として配信している会社です。さまざまなメディアや、広告を作るデザイナーの方などに利用していただくことが多いので、一般にはまだご存じではない方も多いかもしれませんが、一応、この分野では世界で最大手です。

 たとえば、弊社のウェブサイトに作品が載った写真家は、グローバルにその作品を配信できます。日本人のクリエーターでも、自分のコンテンツを海外に輸出することができるわけです。弊社はそのような、いわばショーケースになるウェブサイトを持っています。

 創業時からネットでビジネスを進めてきた会社なので、毎日、世界中のいろいろな方面から弊社のウェブサイトにアクセスしてくるデータを分析しています。そこから、たとえば「今、ヨーロッパでは広告でどういうビジュアルが好まれているのか」とか「スポーツ界ではどの選手がいちばん人気があるのか」といった情報がどんどん蓄積されていく。それに基づいて、トレンドに合った写真を積極的に集めたり、もしくはカメラマンに撮りに行ってもらったり、といったことをやっています。

佐々木: もともと「ストックフォトエージェンシー」という、写真を提供する会社は大昔からあったわけですよね。それこそメディアが生まれた当初からあるんじゃないかと思うんですけど、それとゲッティ イメージズとは何が違うんですか。なぜ、ビジュアル材料の提供をネット時代になってから始めたのか。その辺の経緯を教えて頂けますか。

島本: アナログの時代は、写真をわざわざ宅配便で届けたり、実際にストックフォトエージェンシーに来て検索して頂いたりといった形しか、提供の方法がありませんでした。物理的な面で制約を受けていた分野だったんです。

 それが、インターネットによる自由な検索が可能になったため、より多くの方に、お求めになりやすい形で提供できるようになりました。価格面でも、利用目的に合わせた金額をかなりきめ細かく、ネットならではの形で設定できるようになりました。その違いは非常に大きいと思います。

 また、昔はプロのフォトグラファーが撮った写真しか扱っていなかったんですが、今ではネットを通じて、一般の方からの素材も集めています。そこも近年、大きく変わった点だと思いますね。

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