次期日銀総裁に求められる条件は、経済再生を可能にする金融政策の実行能力である!
次の争点は日銀総裁人事 〔PHOTO〕gettyimages

 国会が始まり、安倍首相の所信表明演説、それに対する代表質問が行われた。質問も答弁も、熱気を欠いた低調なものに終わった。それは、政界が、総選挙の衝撃からまだ抜け出せていない状況を反映しているようである。

 大敗を喫した民主党は、海江田氏が党の新代表に就任したものの、党再建の道筋もたっておらず、代表質問どころではないのが現実であろう。民主党政権は、国を統治する能力に欠けていたが、その政策がすべて間違っていたわけではない。社会保障政策でも、私が厚生労働大臣のときに手がけた多くの改革を引き継いでいる。

 私は、政官業の癒着を断ち切るために、自民党の族議員と戦ってきた。自民党が政権を奪還して、道路特定財源の復活を目論むような、元の古い姿に戻るようでは、3年前の政権交代が意味のないものになってしまう。

 自民党が改革を忘れれば、有権者の支持は急速に失われていくであろう。安倍政権の答弁を聞いていると、大勝したことによる自信過剰が見え隠れする。総選挙で日本各地をめぐってみて、自民党支持が回復していないことを痛感したが、小選挙区制度のからくりで、議席数が大きく伸びたのである。

 安倍首相は、その点を正しく認識しているようで、慎重な国会対応を行う旨を述べている。それだけに、TPP、原発、憲法改正などの争点については、言及しないことにしたのであろうが、いつまでも触れないでは済ませられないであろう。

 参議院は、自民党と公明党だけでは過半数に達しない。どのようにして多数派を形成するかが、安倍政権の大きな課題である。夏の参議院選挙までの半年間の国会運営に失敗すれば、選挙で勝つ公算は小さくなる。通常の法案については、衆議院での三分の二の多数で再可決という手があるが、乱用すれば強引な国会運営を批判される。

 さらに厄介なのが、国会同意人事である。これは三分の二の多数決ルールもなく、衆参が全く平等である。原子力規制委員会の人事は、野田政権が国会での事後承認を約束して決めたものであるが、それは、当時野党の自民党の賛成を得ることができないからであった。

 ところが、政権交代したのに、安倍政権は、この人事に修正を加えることなく、そのままのリストで国会の同意を求めてきた。無用な波風を立たせたくないという、参議院選挙を前にした安全運転であろう。

日銀総裁は仕事ができる人なら誰でもよい

 そこで、次に最大の争点となるのが、次期日銀総裁の人事である。みんなの党の渡辺代表などは、総裁の条件を列挙するのみならず、具体的な候補名まで出している。私は、政府との政策協定をきちんと実行する能力がありさえすればよいと思っている。

 たとえば、博士号所持か否かも問題ではない。私は東大で教えていたが、学士号しか持っていない。東大法学部では、教授を目指す研究者は、学部終了後すぐに助手になって研究を続け、書き上げた論文を厳しく審査されて助教授になる。

 私の場合、途中でフランス、スイス留学という回り道をしたが、私の同僚などは皆、修士号も博士号もないまま東大教授になっている。むろん、大学院に入って修士、博士号をとってから東大教授になる道もある。

 どの組織の出身かも、あまり問題にするには及ばない。仕事ができればよいのである。対外的な発信力を考えれば、英語くらいは喋れたほうがよいが、それも絶対に必要不可欠でもない。要は、デフレを克服し、経済再生を可能にするような金融政策を実行する能力である。

 私は、国会議員になって以来、日銀の金融政策を批判してきたが、過去12年間の国会議事録を精査し、速水、福井、白川と歴代総裁と論戦を繰り広げてきた記録を読み返してみた。たとえば、2001年11月14日の予算委員会で、私は、速水総裁に「物価の安定というのは、たとえば、何%の消費者物価指数なのか」と問うたが、総裁は、「物価の安定と申しますことは、物価が上がりもしないし下がりもしないことです」と答えている。

 この無知な返答に対して、「そんなことだったら小学生でも言える」と私は憤慨して、インフレターゲットの導入を求めたのである。そして、2000年8月のゼロ金利解除こそ、「世紀の大失策」だと、私は、速水氏に反省を求めたが、全く意にも介さない様子だった。このような類の無能な日銀総裁が就任することは、絶対に阻止せねばならない。

 今のところ、円安傾向が続き、株価も上がっているが、それが給料アップにつながるかどうかが最大の問題である。個人の懐が寒いままでは、何のための金融緩和か分からない。給料を上げるのは、経営者である。民間企業の経営実態について正確に把握し、日銀の金融政策決定に反映させることが不可欠である。企業のあり方についても、抜本的な改革が必要なのではあるまいか。

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