「全総時代」に逆戻りする国土強靱化法案が抱える「これだけの問題点」

 アベノミクスの三本の矢の一つである、財政政策は公共事業による財政出動である。その第一弾が補正予算だが、その後もこの公共事業投資の拡大は着々と進められそうな状況だ。その象徴が「国土強靭化」である。

 昨年夏の民主党代表選挙のとき、もし私が出馬するとすれば、闘う相手は党内の対立候補ではなく間違いなく総選挙の相手となる自民党だと位置づけてこの「国土強靭化計画」の問題点を整理していたのだが、結局その時は出馬を見送る結果となった。昨年の総選挙にて政権交代となり、野党に転じた今、この国土強靭化についての課題を整理しておきたい。

国土計画の変遷と政権ビジョンとの関係

 わが国の国土計画は、1950年制定の国土総合開発法に基づき1962年に池田勇人内閣において閣議了解された「全国総合開発計画(以下「全総」)」が戦後初めて、特定地域にとどまらない全国を対象とする総合的な開発計画として定められた。

 後の経済企画庁の前身である経済安定本部が戦後の経済復興のために設置され、施策が立案された。この経済安定本部による電源開発のための河川開発計画や、建設省による台風被害対策のための治水事業並びに地方計画制度が融合した形で策定されたのが、国土総合開発法であった。

 法案策定段階では、アメリカのTVA方式を範とする河川総合開発推進を意図した特定地域総合開発計画がその中心に置かれていたため、「全国計画」的な、日本全体を対象とした構想は持たなかった。そのためか、法案策定から12年の歳月を経てようやく、都府県の作成する都府県総合開発計画や二地域以上の都府県の協議による地方総合開発計画、総理が指定する地域の特定地域総合開発計画の上位計画として「全総」が定められることになった。

 その最大の理由は、池田内閣で定めた経済計画の「国民所得倍増計画」にある「太平洋ベルト地帯構想」に対する他地域からの大きな反発だった。このことから、公共事業の地域配分の偏りを是正することが最大の課題とされ、特定地域の開発計画から「地域間の均衡ある発展」を基本目標とした「全総」が定められることになったのである。

 しかしながら、そもそも「全総」は、具体的施策を推進する手段を何ら法律上担保されていなかった。国土総合開発法では、「全総」の実施に関して、国土庁長官(省庁再編後は国土交通大臣)は関係行政機関の長に対し勧告できることが規定されているだけであった。

 さらに、「全総」と「調整を図る」、「調和が保たれたものでなければならない」、「適合する」などの「調整」・「調和」規定のある計画系法律は河川法や景観法、都市計画法など数多くあるが、曖昧な「調整」・「調和」の概念で他の計画を厳格に規定することは困難であった。

 結果、「全総」に始まる国土計画はその後、関連する政権ビジョンンに大きく左右されることになる。先にも述べたが、「全総」は池田内閣の「国民所得倍増計画」によって「地域間の均衡ある発展」を基本目標としたのだが、次の佐藤内閣での「新全総」は「豊かな環境の創造」を基本目標とした。この策定に大きく影響したと言われるのは佐藤内閣時代の田中角榮通産大臣による「都市政策大綱」であり「日本列島改造論」であった。

 続く「三全総」は福田内閣の時に「人間居住の総合的環境の整備」を基本目標としたが、その後の大平内閣で大平総理の提唱する「田園都市国家の構想」との関係が整理されることになる。さらに中曽根内閣では「四全総」が「多極分散型国土の構築」を基本目標として定められたが、同年に中曽根指名で政権に就いた竹下総理による「ふるさと創生論」にて「均衡ある多極分散型国土の形成」へと進むことになる。

 最後の全総となる「21世紀の国土のグランドデザイン(21GD)」(「五全総」)は「多軸型国土構造形成の基礎づくり」を基本目標として橋本内閣で定められたが、策定後4か月後に発足した小渕内閣の「21世紀日本の構想」によってより理念型の国土計画の色彩が強まったと考えられる。

 このように、国土計画と政権ビジョンとの密接な関係性により構築されてきた全総は、省庁再編を契機として新たに策定された「国土形成計画法」による「国土形成計画」に代わることになる。その際、都府県の計画はなくなり、国土形成計画の広域地方計画に変わり、策定者は自治体ではなく国となった。

 ただし、策定の段階で広域地方計画協議会(自治体を含む関係機関)の協議を経ることとなった。また、「開発主義からの転換」が謳われ、量的拡大や「開発」基調ではなく、環境、景観等を重視した成熟社会型の計画を目指すものとなったのである。
http://www.kokudokeikaku.go.jp/document_archives/ayumi/21.pdf

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