「平成の高橋是清」となるのか!? 積極財政を盛り込んだ「共同声明」に続いて日銀総裁人事のカギを握る麻生太郎副総理
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 麻生太郎副総理・財務金融相は、「平成の高橋是清」を目指しているのだろうか---。一般会計の総額が92兆6,115億円に達する2013年度政府予算案は、1月29日の臨時閣議で承認された。翌日30日の『読売新聞』(朝刊)に目を通した麻生氏はほくそ笑んだに違いない。なぜか。

 同紙本社グループ会長兼主筆の「ナベツネ」こと渡邉恒雄氏が主宰する夕食会「山里会」は、時の権力者をはじめ有力政治家をゲストとして招くことから永田町で知らぬ者はいない。

 渡邉氏が心を許す大手メディア出身の評論家を中心に構成される同会の歴史は古い。故人で言えば、『東京タイムズ』出身の早坂茂三、『毎日新聞』OBの三宅久之氏らもメンバーだった。現在のメンバーは、『毎日』特別編集委員の岩見隆夫、時事通信社出身の屋山太郎、『読売』特別編集委員の橋本五郎各氏の他、現役のシニアクラスも参加している。

 その山里会に麻生氏が招かれたのは、政府予算案の閣議決定が行われた数日前のことだった。ところが、渡邉氏はその席に『読売』の政治部長を同道してきたのである。そして件の政治部長に「麻生さんの言っておられることをよく聞くように」と命じたという。従って、同紙の論調がアベノミクス(安倍政権の経済政策)はもとより、政権交代後初めての新年度予算編成の中身に"好意的"となったのは自然の成り行きである。

 三面トップの横大見出し「安倍流 苦心の編成―重点分野"民主と違う"」や二面の縦見出し「身近な施策も配慮」、さらに「デフレ脱却へ問われる積極策―中長期の財政健全化を怠るな」と題した社説も安倍予算に肯定的であった。だから麻生氏はニンマリとなったのだろう。

高橋是清と同じコースを歩む麻生氏

 ここで本題に入る。では、なぜ、麻生氏が高橋是清元首相を意識しているのか、である。1921年(大正10年)11月4日、原敬首相が東京駅で刺殺された。与党・政友会総裁の座に就いた高橋が後継首班に指名されたのは同13日。が、ワシントン軍縮会議条約調印・内閣改造失敗などで高橋内閣は7ヵ月の短命に終わる。

 その高橋が再び表舞台に登場したのは犬養毅内閣が発足した1931年12月。ほぼ10年後のことだ。蔵相に就任した高橋は内閣発足当日に、浜口雄幸民政党内閣の井上準之助蔵相が決定した金本位制復帰を覆した。そして犬養は翌年1月に衆院解散を断行、不況脱出と景気回復をシングルイシューにした衆院選で少数与党の政友会に大勝をもらした。

 高橋が行なった金輸出再禁止決定と積極財政が奏功したのだ。そこで登場するのが、当時の深井英五日本銀行副総裁である(後に総裁)。私大出身の国際派である深井は、自分の後継人であった高橋に積極財政を要請したのだ。来年からの無制限金融緩和と物価目標2%を盛り込んだ1月22日の政府・日銀の「共同声明」を想起させる。

 ところで、坂野潤治東大名誉教授の名著『日本近代史』(ちくま新書)に次のような件がある。

〈 経済政策を唯一の争点とする選挙戦が功を奏するには、よほど特別な状況が必要であるが、1932年初頭にはその特別な状況が存在していた。世界大恐慌の下で金本位制に復帰した井上財政によって、不景気は都市部でも農村部でも深刻化し、失業者は街にあふれていた---。 〉

 何やらデフレ不況に苦しむ昨年12月の総選挙が想起されるが、アベノミクスの喧伝によって株高・円安が実現して自民党大勝・第2次安倍内閣誕生の結果となったことだ。首相経験者である麻生氏が同内閣の副総理・財務金融相に就いたのは、まさに高橋是清と同じコースを歩んでいると言っていいだろう。

 その麻生氏が次期日銀総裁人事のキーマンと言われている。同氏が武藤敏郎大和総研理事長(元財務事務次官・66年旧大蔵省入省)を推し、菅義偉官房長官は岩田一政日本経済研究センター理事長を推し、閣内に対立があると喧伝されている。だが、麻生氏は先述の「共同声明」発表にこぎつけたことで、みんなの党(渡辺喜美代表)が財務省、特に主計畑出身者の総裁指名に強く反対していることもあり、「武藤総裁」には拘っていないという。

 では、誰が有力なのか。2月15日からモスクワで開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議までに決定されるが、筆者の得ている情報では、渡辺博史国際銀行副総裁・CEO(元財務官・72年)が急浮上しているというのだ。国際性(英語力)と市場とのコミュニケーション力を求める麻生氏の条件に最適任である。決定はもちろん、安倍首相が行なう。

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