世界経済 EU
イギリスがEU脱退の是非を問う国民投票を実施!? ~主権の明け渡しを嫌い、EU内で常に特別扱いを受けてきた島国の事情
〔PHOTO〕gettyimages

  "In or Out?" 何が飛び出すか、1月23日、皆が注目していた英キャメロン首相の基調演説は、案の定、爆弾発言となった。イギリスは、「EUの構造改革を提案し、新しい状況を見たうえで、 "In or Out?"、つまり、EUに留まるか、脱退するかの国民投票を行う」のだそうだ。国民投票は次の総選挙後(キャメロンの保守党が再び政権を握ったならの話)、遅くとも2017年までに行うという。

 「EUは、より柔軟に、より民主的になるべきだ」

 これを聞いたEUの首脳や関係者は、ついに堪忍袋の緒が切れた。一番かんかんに怒っていたのは、EU議会の議長M・シュルツ(ドイツ)。

 「EUをより効果的、民主的なものにし、透明度を上げ、無駄を省くために必要な改革は、ほとんどイギリスのために妨害されたのだ。キャメロンは今まで建設的な提案などしたためしがない。いつも後退することばかり考えていたではないか」

 この日、世界の政治家と著名な経済人の多くは、世界経済フォーラムに参加するため、スイスのダボスに集まっていたが、そこでもキャメロン爆弾はさく裂。

 C.ラガルド世界通貨基金専務理事は、「ヨーロッパは、統合という歴史的なプロセスの下にある。それはイギリスも同じだ」。M.モンティ・イタリア首相は、「EUは、ヨーロッパ人でありたくないようなヨーロッパ人は要らん」。ドイツの外相ヴェスターヴェレは、「これ以上、いいとこ取りをしようというのは無理」。

 フランスの外相ファビウスは、「イギリスがEUを脱退したなら、外国へ逃げだすイギリス企業を、フランスは赤い絨毯を敷いて歓迎する」と皮肉った。というのも、しばらく前、キャメロン首相がフランスの税金の高いことを揶揄して、「うちへ来たいというフランス企業は、赤い絨毯を敷いて歓迎する」と言っていたからだ。

EUには片足しか踏み入れない

 イギリスとEUの関係がぎくしゃくしているのは、今に始まったことではない。彼らは、そのメンタリティーが根本的に違う。"大陸の有象無象が地べたで戦っていた時、我々は雄々しく七つの海を駆け巡っていたのだ"と、イギリス人は思っている。かつての大英帝国の栄光はすでに跡形もないが、そんなことは問題ではない。プライドだけは今でも凄い。

 だからだろう、彼らは常に大陸の民とは意見が異なる。この独立独歩の精神、つまり、 "協調しない"精神は、チャーチル、サッチャーの時代から、小物キャメロンに至るまで連綿と続いている。イギリスの身の丈に、EUは合わない。

 EUの前身は1951年、独、仏、伊、ベネルクスの計6国が立ち上げた「ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体」で、それがEEC→EC→EUへと発展していくのだが、イギリスはというと、1960年にわざわざそれに対抗するため、スイス、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、オーストリア、ポルトガルと共にヨーロッパ自由貿易連合(EFTA)を結成している。

 もっともこれはうまくいかず、イギリスは63年にEC加盟を申請するが、ドゴール大統領の否決権で門前払いを食った。ドゴール大統領は、アメリカがイギリスをパイプにしてヨーロッパに過度に干渉してくることを嫌ったと言われている。

 イギリスがデンマークと共にようやくECに加わったのは73年のことで、やがてノルウェーとスウェーデンも加盟したが、いずれもユーロは導入していない。スイスにいたっては、EUに入る気など毛頭ないだろう。せっかく世界の黒い金を集めて優雅にやっているのに、EUの金融政策など押し付けられてはそれこそ大変だ。

 EUの加盟国は現在27ヵ国で、さらに膨張の気配。そのうちユーロを導入しているのは17ヵ国。このユーロが大火事で、ここ数年、加盟国が助け合ったり、いがみあったりしていることは周知の事実だ。そしてイギリスはというと、最初からずっと、自国だけがEUの中で特別扱いを受けるための努力に専念してきた。この国は、EUには片足しか踏み入れないことを国是としている。

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