おいしさに妥協をせず「自分でモノを売る」にこだわる佐渡「さかや農園」を訪ねて ~農林漁業「6次産業化」の現場レポート
「さかや農園」の佐々木五三郎さんと奥さん (筆者撮影)

 都会の消費者にファンをつかみ直接販売することで「儲かる農業」を実現している人たちがいる。1次産業である農林漁業を加工などの2次産業、販売流通などの3次産業と結びつける6次産業化(1次+2次+3次=6次)の原点とも言える。その成功の秘訣は自ら生産する農産物の品質に磨きをかけ、ブランドを確立することだ。随時掲載している6次産業の現場レポート。今回は新潟県佐渡でりんごなどの果樹農園を営む「さかや農園」を訪ねた。

おいしくて当たり前。妥協は許されない。

 「元気な農業の基本は自分でモノを売ることです。他人にモノを預けたら、日当も出なくなってしまいます」

 佐渡の南西部、西三川にある「さかや農園」の佐々木五三郎さんは徹底して自主販売にこだわってきた。農園で獲れるりんごを、全国から注文を取って「贈答用」として宅配便で直送する。「贈答用」は農園で獲れるりんごの中でも1級品だけ。甘さ、食感、色・形のいずれも誰にもまけない自信作だ。ふじ、王林などの品種を栽培する。

 「佐渡でりんごができるのかとよく言われますが、青森よりずっと甘くて歯ごたえのある最高のりんごができます」と佐々木さん。暖流と寒流がぶつかる佐渡では、魚介類だけでなく農産物の種類も豊富だ。島内ではりんごとみかんがともに収穫できるほか、すいかや梨、ぶどう、柿などが栽培されている。

 「贈答用」に適さないものは西三川に作った島内の直売センターで島民や観光客向けに販売している。味の良さ、鮮度、価格の安さが受けて島内でも人気スポットになっている。これも自力で販売するための工夫だ。

 「贈答用は少しでも品質が悪いとお客さんからクレームが来ます。何しろ直接、お客さんとつながっていますから」と五三郎さんの奥さん。贈答用の顧客は「口コミ」をベースに長い時間をかけて増やしてきた。1000件におよぶ顧客名簿は「さかや農園」の宝だ。今年買ってくれた人に来年もまた注文してもらうためには、おいしくて当たり前。妥協は許されない。

手書きの「農園だより」
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 そんな顧客との"信頼関係"を保つのに一役買っているのが「農園だより」だ。五三郎さんの手書きをそのままコピーしたもので、年に2回欠かさず発行。すでに53号を数えた。りんご畑の様子のほか、家族そろって出かけた旅の様子などもつづられている。

 また、発送する贈答品の果物の箱には農園の住所・連絡先を大き目に書いたちらしを同梱する。贈答品として初めて食べた人が注文してくれるのを期待してのことだ。こうして地道に新しい顧客を増やしてきた。

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