税は政治なり! 「古い自民党」が復活するようでは、日本は前へは進まない!
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 安倍内閣が発足して1ヵ月が経った。デフレ克服に向けたアベノミクスへの期待感か、円安・株高傾向が続いている。また、アルジェリア人質事件についても、迅速に危機管理体制を敷いたことは、評価してよかろう。まずは無難なスタートである。政府与党としては、夏の参議院選挙までは、安全運転でポイントを積み重ねていき、参議院でも安定多数を獲得することが目標である。

 しかし、その目標達成は容易ではない。先の総選挙での大勝は、小選挙区制度のからくりによるところが大きく、比例区の得票率を見ても分かるように、自民党に有権者の支持が戻って来たわけではない。ねじれ国会の解消までには、解決すべき課題が山積している。

 たとえば、参議院選挙直前に、株安・円高という事態になっていたら、政権の政策実行力が問われてしまう。来月には日米首脳会談が予定されているが、それまでにTPPについて党内の意見を集約できるのであろうか。選挙のことを考えれば農業関係者などTPP反対勢力の意向を無視できないが、参加表明にはタイムリミットがある。いつまでも玉虫色で済むわけではない。普天間問題も解決の見通しは立っていない。超えなければならないハードルは多いのである。

 28日には通常国会が召集されたが、まずは補正予算、そして本予算を通さねばならない。また、懸案の日銀総裁人事など国会同意人事も控えている。参議院では、自公両党をあわせても過半数には達しない。野党の協力なしには、法案の採決や国会同意人事が前へ進まないのである。その意味で、綱渡りの政権運営が続く。

古い自民党が復活する芽はいくらでもある

 自公両党は24日、2013年度税制大綱を決定した。成長戦略を後押しするために、研究開発・投資など企業減税を決めたり、住宅ローン減税を延長するなど消費税増税への対応策を導入している。消費税の軽減税率は、8%ではなく、10%への引き上げのときに検討することになった。

 この税制大綱の策定過程では、古い自民党の復活かと思わずにはいられない光景が見られた。党税調の委員会が開かれる自民党本部9階の会議室前には、陳情する各種団体・業界の代表が、大声を上げながら、税制改正要望事項を書いたビラを議員に渡している。これぞ、まさに「政官業の癒着」を象徴する風景である。業界は、自分たちの利益を推進してくれる議員の発言力に期待する。そして、その見返りとして票とカネを集める。

 ロビー活動は民主主義の重要な一要素であり、各種利益団体が自らのために行動することは当然である。しかし、それが贈収賄事件などの政治腐敗につながらないようにしなければならない。

 かつて自民党が長期にわたって政権を維持していたとき、何年かおきに大きなスキャンダルを起こし、それが政権批判を招くことになった。日本における政治改革とは、自民党政権下での政官業の癒着との戦いであったと言ってもよい。中選挙区制度に対する批判も、派閥間の競争が業界からの集金合戦となってしまうことを念頭に置いていた。

 今回、自民党税調は自動車重量税を道路特定財源とする方針だったようであるが、党内外から批判を受けて、その方針を撤回し、一般財源とすることになった。このように、古い自民党が復活する芽はいくらでもあるのである。特に、税制は企業や個人の経済活動、日常生活に大きな影響を及ぼすので、細心の注意が必要である。

 消費税については、逆進性を考えると、二桁になったら複数税率、つまり軽減税率の導入を考えてもよいが、その際に、政官業の癒着をいかに排除するかが大きな課題となる。今日のように豊かな、そして価値観が多様化した社会では、何が贅沢品かの判断は容易ではない。主食にしても、精米、玄米、麦飯、パン、どれが贅沢品かは、個人の嗜好による。公共交通機関が少なく、車が不可欠な地域では、車は贅沢品ではない。

 では、価格にしていくら以上なら、贅沢な高級車なのか。500万円の車なら10%で50万円、200万円の車なら5%で10万円というような決定ができるのか。また、金持ちには高級品を買ってもらって10%の消費税を払ってもらうほうが、税収は伸びるし、税の公平性も増す。ヨーロッパのようなインボイスの導入も検討課題である。

 複数税率の議論が始まるやいなや、「新聞には軽減税率を適用せよ」と社説で声高に主張した全国紙があったが、よほど経営に行き詰まっているのだろうか。もしそうならば、その新聞は財務省批判などしないのではないか。

 税の議論は、じっくりと時間をかけて国民的合意を形成するしかない。古い自民党の復活や、マスコミを含め各企業・団体が自己利益の擁護ばかりしているようでは、この国は成り立たない。安倍政権の今後は、その点の認識があるかどうかにかかっている。

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