世界のどこかで生じては弾けている「バブル」のはなし

 年末の衆議院議員総選挙に大勝して発足した第2次安倍内閣は、景気低迷の打開策として、2~3%のインフレターゲットの設定やその目標値達成までの無制限の金融緩和を唱え、円高・デフレ脱却を打ち出した。たしかに政策を発表後は円安傾向が進み、株価は上昇の兆しを見せている。短い「バブル」が再びやってくるかもしれない、という憶測もある。

 バブルというと、世界の歴史においては、オランダの「チューリップ・バブル」(1637年)、イギリスの「南海泡沫事件」(1720年)、スランスの「ミシシッピ計画」(1719年前後)という「ヨーロッパ三大バブル」が有名だ。

 驚くべきことに、これらのバブルでは「チューリップの球根」や「イギリス中のトイレの汲み取りを集めて資源にする会社」「非常に有望であるが誰にも事業内容がわからない会社」等が投資の対象となっている。冷静になって考えれば投資に値するか否かはなはだ疑問であるが、周囲の人間が儲かっているのを見て、つい「自分も・・・」と手を出してしまうのがバブル経済下の人々の心理なのであろう。

 多くの方が実体験としてご存知のように、日本にも、バブル景気と呼ばれる狂乱の時代が存在した※正確には1986年12月から1991年2月までの51ヵ月間。たしかにこの時期はお金が湯水のごとく使われた。僕に依頼されたプロジェクトもまたしかりで、企業にも個人にも有り余るお金をとにかく使おうという雰囲気が蔓延していた。

 結果として、今では考えられない巨費を投じたプロジェクトも実現できたし、世界中でリッチな買い物をすることもできた。しかしその一方で、自分の仕事を正当な価格で評価されたい、という冷静な思いを持っていたのも事実だ。

若い世代はバブルのエネルギーを肌で感じてみてほしい

 内容も規模もさまざまだが、こうしたバブル経済は近代に入って発生の頻度を高めているように思える。日本ではバブルといえば真っ先に土地や株が投資の対象として思い浮かぶが、世界では僕たちが気づかないうちに食事や住宅、アートやデザインの分野にも、バブル現象は生じている。

2010年9月、ベルサイユ宮殿に展示された村上隆氏の作品 〔PHOTO〕gettyimages

 たとえば2008年、村上隆の"My Lonesome Cowboy"が1516万1000(約16億円)ドルで落札され、2011年には中国の画家・斉白石の『松柏高立図 篆書四言聨』が4億2550万元(約53億円)で落札された。村上隆は世界的なアーティストであるし、斉白石は現代中国画の巨匠だが、それにしてもフィギュア1体に16億円、水墨画1枚に50億円以上もの値が付くのは尋常ではない。

 もうひとつ注目すべきは、日本の経済は20年前にバブルが弾けて以降、回復の気配を見せていないが、今も地球のどこかで短いバブルが起きては弾けているということだ。数年前なら中国やシンガポール、アラブ諸国などが該当するだろうし、直近の例ならGDPが年間25%増の勢いであるアンゴラ共和国もバブリーな国家といえるのかもしれない※アンゴラの場合は数字的にはバブルだが、実態は内戦後の国家の正常化へのプロセスであることに留意する必要がある

 バブルにはもちろん"功"と"罪"の両面がある。しかし、もの凄い勢いで成長し続ける圧倒的なパワーと、そこに住む人々の醸し出す"狂気"からは、今の日本にはないエネルギーを感じることができる、というのもまた事実だ。

 そのエネルギーの行きつく先は、まったく新しいモノを生み出す恵みの泉かも知れないし、狂乱と散財の底なし沼なのかも知れないが、いずれにせよ、特に若い世代の読者には、一度こうした国や地域を訪れて、バブルというものがどういったものなのかを、自分の肌で感じてみてほしいと思う。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら
新メディア「現代新書」OPEN!