第20回 アンディ・ウォーホル(その二)
自ら製作した映画の出演者に狙撃される。
そして二十世紀を代表する画家へ―

 一九六八年六月三日。

 マンハッタンの空は珍しく、スモッグもなく晴れわたっていた。

 アンディ・ウォーホルは、東五十丁目から、新しいファクトリー(アトリエ)―ユニオン・スクエア・ウェスト三十三番地―に帰ってきた。

 ウォーホルのマネージャーであるフレッド・ヒューズに雇われているジェド・ジョンソンは、ウェスタン・ユニオンの電報配達人だったが、ハンサムで気が利くところから、ウォーホルやその取り巻きが注目するところとなり、以来ジェドは、ファクトリーの雑事をこなすスタッフの一人に加えられた。

 その午後もジェドは、ウォーホルから頼まれたこまごました買物をした後、ファクトリーで―午後四時ぐらいに―合流した。

 壁に凭れている、レインコートを羽織った女性に、二人は特段の注意を払わなかった。
 ウォーホルとジェドが貨物用の大型エレベーターに乗り込むと、追いかけるようにして、レインコートの女が乗り込んでくる。

 誰だったっけな―見覚えのある女性だったが、思いだせない・・・・・・。

 突然、銃声が響いた。

 至近距離から、ウォーホルが撃たれたのだった。撃ったのは、ヴァレリー・ソラナス。

 かつてウォーホルが製作したパロディ映画の出演者だった。

 ヴァレリーは、さらに二度引き金を引いた。

「ノー、ノー」と喚きながら、ウォーホルは床に転がった。

 ファクトリーに居合わせた美術ジャーナリストのマリオ・アマヤは、サヴィルローで仕立てたスーツの尻を撃たれた。