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北京発現地レポート 大気汚染と発がん「フカヒレ」で大騒ぎ

マスクを求めてパニックに

「北京市の大気の状況は大幅に改善され、いまや過去14年で最高に澄みきった空気になった」

 昨年12月31日、北京市環境保護局のスポークスマンは、こう高らかに「クリーン宣言」をした。

 だがその舌の根も乾かない1月10日から14日にかけて、北京市内一帯は粉塵にまみれ、阿鼻叫喚の修羅場と化したのだった。

 氷点下20度近い寒さで石炭使用量がピークに達したことや、520万台に及ぶ車両の大渋滞、それに空気の乾燥、風がピタッと凪いだことなどが重なったためだった。

 北京市環境保護局は、市内35ヵ所で、国際基準に基づいた大気汚染指数を毎日計測し、ホームページ上で公表している。この指数が100を超えれば危険で、最も危険な「300以上」とは、「人体のあらゆる部位に直ちに計り知れない危険が及ぶ」レベルだ。

 ところが北京市では何と、12日に35ヵ所のうち17ヵ所で「500以上」を、24ヵ所で「450以上」を記録してしまった。市内西部の中心地、西直門では何と「933」を記録! 5ヵ所では想定外の高数値によって計測器が壊れ、計測不能となる始末だ。専門家によれば「933」とは、即日肺がんを発症してもおかしくないレベルだという。

 このため、2000万市民が住む首都・北京はパニックと化した。

 薬局のマスク売り場には人々が殺到し、ある店では5620個も売れた。経済不況がひたひたと忍び寄っている中で、「薬局は市内唯一の好況業界」とネット上で揶揄された。

 いや、病院も門前市を成す賑わいである。北京児童病院には、1月12日に900人もの子供が殺到。「挂号」と呼ばれる受付票を親たちが奪い合って、病院は大混乱となった。

 この時、一儲けした人々もいた。それは病院で明け方から並び、「掛号」の代行を行う「並び屋」だ。一枚の「掛号」が100元(約1420円)を超えた病院もあったとか。

 北京市公安局は、市民全員にあてて、外出を控えるよう注意を促すショートメールを流した。だが、それでも外出せねばならない人は、マスクをし、その上にマフラーなどで顔を覆う重装備だ。彼らは、日中というのに視界はほぼゼロなので、手探りで歩くしかない。

 北京っ子は、朝会えば「早!」と挨拶を交わすが、皆ノドが腫れ上がっているので、声を出す者もない。目も開かないほど痛いし、鼻もヒリヒリする。髪までチクチクしてきて、頭が締めつけられるように痛む。

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