歳川隆雄「ニュースの深層」
カテゴリーアイコン

官邸主導の危機管理対応に瑕疵はなかったが、「日本版NSC」の設置には超党派の賛同と国民の理解が不可欠である

2013年01月26日(土) 歳川 隆雄
upperline
〔PHOTO〕gettyimages

 政治の世界では、「運も実力のうち」という言葉がある。その意味で安倍晋三首相は、滑り出しから「ツキ」にも恵まれていると言っていいかも知れない---。

 不謹慎と言われる向きもあるだろうが、アルジェリアで発生した邦人人質事件のことを指す。国の安全保障や危機管理については怜悧冷徹に観る必要がある。イスラム武装勢力がアルジェリア南東部イナメナスの天然ガス関連施設を襲撃した事件は、プラント建設に従事していた日揮社員・派遣社員日本人10名が殺害されるという最悪の結果となった。だが、今般の不幸な事件への安倍政権の対応について、「瑕疵はなかった」というのが支配的な見方である。

 事件発生初期の安倍首相の東南アジア歴訪中断・帰国決断から、その後の官邸主導の当該国アルジェリア政府、プラント建設を主導するBPの英国・キャメロン政権、隣国マリの反政府勢力一掃作戦を展開するフランス・オランド政権、そして北アフリカ地域のエリント情報を持つ米国・オバマ政権との協議を含めた対応に至るまで、「宿題」は残したが、できることは全てやったという評価が定着しつつある。

「菅官房長官は、まさにはまり役」

 今回の事件で際立ったのは、安倍官邸主導の対応の中でも、菅義偉官房長官の存在感である。初期段階では、安倍外遊のハイライトとして位置づけていたジャカルタでの「安倍ドクトリン」発表を取り止めて帰国したが、この決断はもちろん、安倍氏自身によるものだ。が、安倍氏に早期帰国を強く助言したのは菅氏である。また、現地イナメナスに城内実外務政務官を滞在先のクロアチアから急きょ派遣することを決めたのも、城内氏の上役の岸田文雄外相ではなく菅官房長官であった。

 1月21日深夜の官房長官記者会見もまた関係者の間で話題となった。城内政務官が速報してきた現地最新情報を踏まえた状況報告を行なう前に「哀悼」の意を述べた菅氏の言葉がまさに畏敬の念から振り絞ったものであり、聞く者の心を揺さぶったのだ。こうした菅氏の情念的なメッセージだけでなく官邸での冷静な差配には賞賛の声が少なくない。

次ページ  その意味では、安倍首相が事件…
1 2 次へ

このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
関連記事


underline
アクセスランキング
1時間
24時間
トレンドウォッチ
編集部お薦め記事