「息子と僕のアスペルガー物語」 ライフ
奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第14回】
「君はバカ? それとも天才?」と聞かれて

【第13回】はこちらをご覧ください。

嫌われたくなくて、無理に笑顔を作った大学生活

 大学に入学してから、僕は「周囲から嫌われること」を心底恐れていた。高校時代と同じである。

この連載の第11回で述べたように、僕は高校1年のときに、発達障害を持つ者に特有の言動のせいで、クラスメートたちから徹底的に嫌われるという経験をしていた。本当に偶然、周囲が僕に嫌悪の感情を向けていることを知ったのだ。そのときに受けた大きな衝撃は、3年近く経っても、深く、つらく心に残っていた。

 高校ではその後、人に嫌われないような言動を必死で「学習」し、何とか"いい奴"を演じ続けることができた。しかし、人生は高校で終わりではない。僕は内心、「大学でも"いい奴"を演じなければならない。もう絶対に嫌われたくない」と固く決心していた。

 入学式が終わり、大学生活が始まった。

 僕は、周囲(新しい同級生たち)とのコミュニケーションの取り方を「ニコニコ笑っていること」だけに限定した。自分からは決して他人に話しかけず、逆に誰かから話しかけられても、ほとんど何も答えずに、ただ微笑してウンウンと相槌を打っていた。

 「余計なことを口にして、クラスメートの間に波風を立てないようにしよう」ということばかりを考えていたのだ。いつも無理に笑顔を作っていたので、顔の筋肉がよく痛くなった。

 基本的に毎日、僕は授業を受けるだけで自宅に直帰した。ただし、授業と授業の間の休憩時間には、新しい同級生たちがどんな言動を嫌うのか、あるいはどんな言動を好むのか、注意深く観察を続けた。"いい奴"を演じるために、大学における人間関係のルールを知っておこうと思ったのだ。

 その結果、わかったのは、高校でも大学でも、そのルールはあまり変わらないということだった。

 「他人とのコミュニケーションにおいては、絶対に本当のことを言ってはいけない場合がある」「特に、他人の言動に対する評価では、本当の感想は言わない方がいい」「他人が自分にしてくれたことには、仮に欠点や不十分な点があっても決して指摘せず、『ありがとう』と感謝の言葉だけを述べておけばいい」「自分の成し遂げたことに対する自己評価も、黙っていた方がいい」・・・