「イスラムはなぜ過激なテロ行為をとるのか?」佐藤優氏が本の引用を交えて解説

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.006より
【佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol.007 目次】
―第1部― インテリジェンス・レポート
 ■分析メモ(No.12)「アルジェリアにおける日本人等人質事件」
 ■分析メモ(No.13)「森喜朗元首相が語った北方領土三島返還論の意味」
―第2部― 読書ノート
 ■山内昌之 『民族と国家 イスラム史の視角から』
 ■浜矩子 『新・国富論 グローバル経済の教科書』
―第3部― 質疑応答
―第4部― 文化放送「くにまるジャパン」発言録
―第5部― 佐藤優さんの今後の予定

読書ノート(No.11)

◆山内昌之 『民族と国家 イスラム史の視角から』 岩波新書 1993年

 アルジェリア南東部イナメナスの天然ガス関連施設で起きた人質事件は、日本人にイスラム過激派の危険性を再認 識させた。イスラム過激派は、なぜこのような行動を取るのだろうか。その内在的論理をわかりやすく解説したのが山内昌之東京大学名誉教授の名著『民族と国家 イスラム史の視角から』だ。イスラムと政治の関係や、イスラム絡みの国際テロリズムについて論じる際の本書は基本書である。

 まず、イスラムのドクトリンでは、一神教を信奉するユダヤ教徒、キリスト教徒は、「ズィンミー」(保護された民)と「ハルビー」(まつろわぬ戦さの民)に区分される。

<しかし、「啓典の民」の集団については、アラブ人が征服の結果としてイスラム共同体に組み込んでいったキリスト教徒と、その外部とくに地中海を挟んでヨーロッパに蟠踞(ばんきょ)してやがて十字軍戦争をおこすキリスト教徒との間に、区別がなされたのは当然である。かれらは、イスラム権力と取り結ぶ政治・経済・社会的な関係の性格を基準にして、「ズィンミー」(保護された民)と「ハルビー」(まつろわぬ戦さの民)に区分された。それぞれ、ユダヤ教徒とキリスト教徒のうち、従属的な異教徒と敵対的な異教徒を意味する名称である。ハルビーという名は、「イスラムの館」(ダール・アルイスラーム)の境界の向こう側に住むキリスト教徒たちが、「戦争の館」(ダール・アルハルブ)に住む「まつろわぬ者」と見なされたことに由来する。・・・・・・(略)

このテーマについて深く知るための「連読」3冊
・「改訂版 高校世界史」 著:佐藤次高/木村靖二/岸本美緒 山川出版社 2012年
・「イスラム 回教」 著:蒲生礼一 岩波新書 1958年
・「復興亜細亜の諸問題」 著:大川周明 中公文庫 1993年

読書ノート(No.12)

◆浜矩子 『新・国富論 グローバル経済の教科書』 文春新書 2012年

 国際社会が急速に新帝国主義的な転換を遂げているというのが評者の持論である。もっとも19世紀から20世紀初頭の古典的帝国主義国は植民地獲得をめぐり大国間の全面戦争を引き起こした。これに対して、新帝国主義国はコストがかかる植民地を経営するつもりもなければ、核戦争で共倒れになる危険をはらむ大国間の全面戦争も避ける傾向がある。

 大胆な金融政策と財政出動で景気浮揚を図るアベノミクスは、日本国家が生き残るための品格のある新帝国主義政策であるというのが筆者の率直な認識だ。国際社会も、新帝国主義という言葉は用いないが、似たような認識をしている。この点で、『産経新聞』が報じた米国、韓国、IMF(国際通貨基金)のアベノミクスに対するコメントが興味深い。・・・(略)

 ここからさらにカール・マルクス『資本論』(岩波文庫)や宇野弘蔵『経済原論』(岩波書店)を読み進めれば、貨幣の物神性がよくわかる。 ・・・・・・