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「プリウス」にプア評価の「全米衝突テスト」ホントか?相変わらず大売れ!
IIHSによる実際の衝突テストの様子。ダミー人形を乗せて時速64㎞で車の斜め前方を障壁に衝突させ、人形への影響などを見る

 昨年の車種別新車販売台数ランキングが1月10日、発表され、トヨタのハイブリッド車「プリウス」が31万7675台で4年連続の1位に輝いた。プリウスの販売台数は'11年の25万2528台から大幅アップし、過去最高を記録した。

 しかし、その絶好調・プリウスについて、昨年末アメリカで気になるテスト結果が発表されている。

 IIHS(=高速道路安全走行のための保険機構)が公表した、右表を見てほしい(車名はいずれもアメリカで販売されているもの。日本では未発売もしくは違う車名になっているものもある)。プリウスは、この調査で「プア(貧弱)」と評価され、ランキング最下位に沈んだ。

 衝突テストを実施しているIIHSはアメリカの多数の損害保険会社が資金提供している非営利団体で、テストの結果を自動車メーカーに伝え、設計変更など改善を求めている。テスト方法は、ダミー人形を車に乗せ、障壁に激突させて車の損傷度合いや、人形の頭部、首、胸部、足、腰などへの衝撃度合いを調べるというもの。プリウスは、車体の損傷と、それによる脚部への圧迫がより大きいと判定されたのである。

トヨタ・バッシング再燃!?

 衝突テストを行ったIIHSのエイドリアン・ランド代表はこう語る。

衝突テスト後のプリウスの運転席。エアバッグの作動が遅く、脚部などが圧迫されたと指摘されている

「今回、新たに行った衝突テストでは、時速40マイル(64km)で車のフロント部分の25%が障壁に激突した場合を想定しています。これまでの調査で、車前部の25%がぶつかったときに運転席や助手席に座っている人に重傷や致命傷が発生することが多いとわかったからです。

 '12年8月に高級中型車のテスト結果を発表し、12月20日に全米で売れ行きの良い中型車18車種の結果を発表しました。その結果、プリウス、カムリのトヨタの2車種について、厳しい結果が出ました」

 もっとも高い評価を受けたのは、ホンダのアコード(4ドア)で、ほとんどすべての項目で「優秀(good)」の評価を獲得。スズキのキザシもほぼ同じ評価を得た。

もっとも優秀という評価を得た4ドア版アコードは、車前部が潰れているが脚部への影響は少ない

「テスト結果は、日本ではほとんど知られていませんが、全米の主要メディアで大きく報じられました。あるテレビ局では、実際に起こった高速道路での事故の映像を交え、トヨタ車が衝撃に弱いことを印象付けるようなニュースに仕立てていた」(在米ジャーナリスト)

 以前、'09年~'10年にかけて、一部のトヨタ車のアクセルペダルが戻りにくく、急加速して事故に至ったケースがあるとして、全米で多数の訴訟が提起される「トヨタ・バッシング」が起きた。豊田章男社長が米議会で釈明するなどして沈静化したが、今回の一連の報道には、バッシングを思わせるようなものもあった。

全米3大ネットワークのひとつ、NBCのニュースでも、衝突テストの結果が大きく報道された。プリウスの映像に「プア」と烙印が

 実は今回の調査でも、頭部、胸部への衝撃では18車種に差が出なかった。プリウスの販売台数は、日本だけでなくアメリカでも絶好調。燃費がよく、環境にもやさしいとして、高い評価を得ている。そのプリウスに、思わぬ批判が浴びせられた形だが、本当にプリウスの「衝突耐性」は低いのか? 自動車業界に詳しいジャーナリストの塚本潔氏は、今回のテスト結果の内幕をこう明かす。

「この衝突テストは、1995年から毎年実施されているもので、これまでトヨタ車は優秀な成績を収めていました。実は今回のテストから、試験方法が微妙に変わり、車前部の40%を障壁にぶつけていたものを、25%だけぶつけるようにしたのです。

 こうした試験方法に対するメーカーの対応はまちまちで、事前に試験内容をチェックし、それに対応してよい結果が出るような車作りをしているメーカーと、そうでないメーカーがあります。今回のテスト結果について、業界筋では『ホンダはかなりきちんと対策をしたらしい』と言われています。一方、トヨタはこれまで優秀な成績をとっていたこともあり、今回はあまり気にしていなかったようですね。

 現在、トヨタの全米での販売実績は絶好調ですが、今後、GM、フォードなどとの販売競争はますます熾烈なものになっていくと思います」

 別の自動車ジャーナリストは、「テスト結果をよく見ると、もっとも重要な頭部、胸部への衝撃では、トヨタ車も優秀という評価を得ている。プリウス、カムリが『狙い撃ち』されたのは、急速に業績を回復させ、再び販売台数世界一になる見通しのトヨタに対する牽制の意味合いもあるのではないか」と読み解く。

「試験内容が変わるということは、事前に知っていました。それに対応するべく努力しましたが、時間的な制限もあり、間に合いませんでした。

 今後は試験に対応出来るように努力したい」(トヨタ広報部)

 円安などの追い風によって日本の自動車メーカーは今年こそ反転攻勢に出たいと意気込んでいるが、油断は禁物ということだろう。

「フライデー」2013年2月1日号より

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