尖閣、竹島「奪還」運動をする人々の「情熱と孤独」
~中国・韓国「ネット愛国者」を訪ねて~ 【後編】

安田浩一(ジャーナリスト)

【前編】はこちらをご覧ください。

「韓国最大のネトウヨ組織」?

 ソウルの中心部から車で20分ほど。雑居ビルが集中する地域にVANK(Voluntary Agency Network of Korea)の事務所があった。VANKは会員数10万人(うち国内会員7万5000人)を誇る韓国最大の愛国者団体である。いや、日本ではむしろ「韓国最大のネトウヨ組織」という表現で伝えられることが多い。

「日本より深刻? 韓国・中国の『ネトウヨ亡国』本日も炎上中」(『SAPIO』2012年8月22・29日合併号)、「韓国ネトウヨ団体の恐るべき全貌」(『SPA!』 同年9月11日号)---こうした記事で「韓国ネトウヨ」の代表格として必ずといってよいほど取り上げられるのが、このVANKなる組織なのだ。

・「F5アタック」(パソコンのF5キーを連打して集中アクセスを行う行為)で「2ちゃんねる」や保守系ブログのサイトを麻痺させた。

・竹島問題、慰安婦問題について世界中の各種機関のウェブサイトに日本に対する抗議文書を送りつけている。

・日韓関係が悪化するたびに、ネット上で対立を煽るようなサイバーデモをおこなっている。

 これらすべてがVANKの仕業だとされている。我が国におけるネット上での評価も散々だ。「反日団体」「サイバーテロリスト」として、主に日本のネット右翼方面からは徹底して目の敵にされている。だからこそ、私は軽い緊張を覚えながら、事務所のドアをノックした。

 インターホンで来意を告げるとドアが開いた。その瞬間、私の目に飛び込んできたのは、あまりにもオフィス然とした事務所の光景だった。小学校の教室ほどの広さを持つフロアにはパソコンの置かれたデスクが整然と並び、10人ほどのスタッフが、それぞれ"仕事"に打ち込んでいた。圧倒的に若い女性の姿が多い。西洋人の姿もあった。米国とロシアからの留学生だという。彼女たちは「インターン」としてVANKの業務を手伝っているという。

 「こんにちは」「アンニョンハセヨ」「ハロー」

 日韓英の3ヵ国語で挨拶が飛んできた。そのあまりにも開放的で明るい雰囲気は「ネトウヨ組織」というよりも、まるで外資系企業のイマドキのオフィスのようだ。

 フロアの一番奥の席では、団長の朴起台(38歳)が待ち受けていた。黒スーツにえんじ色のシャツ、そして派手なストライプのネクタイ。隙のないファッションの朴は、しかし、親しみのある笑顔で私に握手を求めてきた。

 「こんにちは、ようこそいらっしゃいました」

 ぎこちない日本語が朴の口から漏れた。

 学生時代、日本語を専攻していたのだという。

 「恥ずかしいことに私は勉強熱心な学生ではなかったので、日本語は挨拶しか覚えていません。ですからインタビューは英語でも構わないでしょうか?」

 申し訳なさそうに話す朴に対し、私もまた「恥ずかしながら」と英語に自信がない旨を話し、結局、韓国人通訳を介しての取材となった。

 私はまず、素朴な質問を朴にぶつけた。

 韓国最大のネット右翼、愛国組織だと日本では評判だが、そうした自覚はあるのか---。

 朴は私の顔をしげしげと見つめると膝を叩いて笑い出した。さらに事務所スタッフに向かって「僕たちのこと、右翼だってさ」と声をあげた。事務所内がどっと笑いに包まれる。

 「大きな誤解です。私たちは右翼でもなければ民族主義者の集まりでもない。だいたい10万人もの会員がいる右翼組織なんて怖くないですか? 私はイヤだなあ、そういうの」

 朴はニコニコしながら説明を続ける。

 「民間外交官の集まりだと理解していただけたら嬉しいです。世界中に友人をつくりたい、そしてもっと韓国のことを知ってもらいたい。そう願う人たちによって運営されているんです」

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