尖閣、竹島「奪還」運動をする人々の「情熱と孤独」 ~中国・韓国「ネット愛国者」を訪ねて~ 【前編】安田浩一(ジャーナリスト)

2013年01月29日(火) g2
upperline

 洪は大使館に向かって吠えながら、自分のスマートフォンを私服警官に渡し「俺の写真を撮ってくれ」と頼んだ。仕方ねえなあといった表情を浮かべながら、警官は面倒くさそうにシャッターを押していた。おそらく活貧団のHPに"勇姿"を掲載するつもりなのだろう。

「過激な愛国」の代償

 その夜、私は洪のリクエストに応えて日本料理屋で彼と刺身をつまんだ。

 「刺身が好きだ。日本の芸術品じゃないか」

 洪は焼酎のグラスを次々と空けながら上機嫌だった。

 「私はね、日本にはもっと頑張ってもらいたいんだよ」

 酒のせいか、洪の口調は滑らかになっている。

 「あんたの国は世界で2番目に力を持っている。だが、最近はどうだ? 中国に負けそうじゃないか。もっと毅然と振る舞わないといかん」

 新橋のガード下で、酔っぱらいのサラリーマンを相手にしているような気持ちになる。

 「私はねえ、神風特攻隊を尊敬しているんだよ。若者が国のために命を賭けたんだ。私の憧れだよ。というか私と似ていないか? 今の韓国にはそこまで気概のある若者がいるのかどうか」

 国のために命を捨てることのできる人間は素晴らしい。洪は何度も繰り返した。当然といえば当然かもしれないが、洪は時代の流行にも、コスモポリタン化するソウルにも、何の興味もないらしい。洪が懐かしむのは朴正熙が実権を握っていた時代なのだ。戦火で焼け野原となった韓国を復興させ、共産主義者を取り締まり、外圧にもめげなかった「維新体制」だ。

 「なかなか理解されないんだがね・・・」

 韓国内の保守・愛国陣営においても異端児扱いされる洪の孤独が、その口調に滲んでいるようにも思えた。常軌を逸した過激な行動は、その裏返しなのかもしれない。

 多少の報道によって知名度こそあるものの、活貧団の会員数はそれほど多くない。知人の韓国人記者は「ネットで彼らを賞賛する声も少なくないが、実際の会員数は数十人程度で、政治的な影響力は皆無に等しい」と突き放す。

次ページ  活動資金は洪の退職金と、シン…
前へ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 次へ

このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
関連記事


underline
アクセスランキング
1時間
24時間
トレンドウォッチ
編集部お薦め記事