尖閣、竹島「奪還」運動をする人々の「情熱と孤独」 ~中国・韓国「ネット愛国者」を訪ねて~ 【前編】安田浩一(ジャーナリスト)

2013年01月29日(火) g2
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 活動資金は洪の退職金と、シンパからの寄付で賄っている、と洪は話す。

 「韓国の企業は愛国活動に無関心だ。ヤツらは会社の利益にしか興味がない」

 饒舌な洪も、カネや団員数の話になると、心なしかトーンが落ちる。

 それ以上に困惑した表情を見せたのは、家族について私が問うたときだった。

 「妻とは離婚した。活動が忙しくなってから、あまりうまくいかなくなった。成人した子どもも2人いるが、私の活動に興味はないらしい。幼いころは、よく私の活動についてきてくれたんだがなあ・・・。今は『好きなようにすればいい』としか言ってくれない」

 当然ですよ、という言葉を私は飲み込んだ。洪があまりにも苦しそうな顔を見せたからだ。

 誰よりも愛国者になりたいと願いながら、誰からも理解されない。誰よりも国を愛しているのに、国から評価を受けることもない。その悔しさと焦りが表情に浮かんでいた。

 帰り際、洪は千鳥足になりながら私に向かって話しかけた。

 「君が日本人である以上、私のことは理解できないだろう。でも、それでいい。それでいいんだ! 今日は久しぶりに美味い酒を飲んだ」

 洪は私に背中を向けて雑踏の中に消えた。数時間前に両腕をブンブン振り回し青瓦台で吼えまくったときの洪とは違い、なにやら寂しげな背中が、いまも私の網膜に焼き付いている。(文中敬称略)

〈次回につづく〉

『g2(ジーツー) vol.12』258~268ページより抜粋

 

安田浩一 (やすだ・こういち)
1964年静岡県生まれ。週刊誌、月刊誌記者などを経て2001年よりフリーに。著書に『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)、『外国人研修生殺人事件』(七つ森書館)ほか。新刊『ネットと愛国』(小社刊)で2012年度講談社ノンフィクション賞、JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。

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