アルジェリア人質事件を通して再認識させられた日欧関係緊密化の必要性
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 アルジェリアで卑劣な人質事件が起こった。テロリズムは厳しく弾劾されねばならない。安倍首相もASEAN諸国歴訪の旅を短縮して帰国し、対応に当たったが、日本政府は最初から情報不足に悩まされた。

 中東、北アフリカ諸国が民主化の波に洗われている中で、アルジェリアは閉ざされた国であり続けている。治安もよくない。アルジェリア政府が、テロリストに対して軍事作戦を開始する際にも、人質をとられている諸国と緊密に連絡をとることはしなかったようだ。

 今回の事件は、アルカイダ系のテロリストが、中東から北アフリカへと活動の範囲を拡大している中で起こった。直接的には、フランスがマリへ軍事介入したことに対する反発だと考えられる。旧宗主国であるフランスは、マリ政府によるテロリスト掃討要請を受けて、空爆、そして地上軍の投入に踏み切ったのである。

 私は、フランスの大学で勉強していたこともあり、マグレブ地域などのフランス語圏を訪れ、大学で授業をしたり、現地のテレビに出演したりしたことがある。具体的には、チュニジア、モロッコ、コートジボワール、セネガルなどの諸国であるが、アルジェリアだけは、治安上の理由で入国しないように求められ、ついに入国を果たせなかった。今回の事件の推移、そしてアルジェリア政府の情報統制の厳しさを見るかぎりでは、状況は今でもあまり変わっていないようである。

 そのような土地に、プラント建設のために日本企業が進出し、事業展開していることには、頭が下がる思いである。企業や個人の危機管理には限界がある。やはり、政府が全面的に責任を持つ必要がある。アルジェリア政府の軍事作戦開始を日本政府が知ったのは、アルジェ駐在のイギリス大使を通じてであったように、日本の情報収集能力には限界がある。その点では、かつてアフリカに植民地を有していたフランスやイギリスに劣るのは当然である。

ヨーロッパは大いに利用する価値のある地域

 そこで、中東やアフリカに関しては、英仏をはじめとするヨーロッパ諸国と緊密に協力し、情報の共有を図り、必要に応じて協調行動することが必要になってくる。ヨーロッパの利用価値は、地理的に、単にヨーロッパ内部に留まらず、中東やアフリカにも及ぶということを忘れてはならない。

 チュニジアやアルジェリアは、地中海を挟んでヨーロッパの対岸である。ヨーロッパにとっては、アルジェリアからの石油や天然ガスなどの資源の供給がテロリストの攻撃によって途絶えることは、断じて容認できない。フランスの軍事介入の背景には、エネルギー問題がある。

 日米関係が、日本外交の基軸である。民主党政権下で、日米関係を良好に保つことができなかったことが、日本の国益を大きく損ねた。安倍政権下で、岸田外務大臣が訪米し、クリントン国務長官と会談し、尖閣諸島に関して両国で中国を牽制したが、そのような姿勢が、中国と対峙するときに大いに役に立つ。

 しかしながら、日本の国益とアメリカの国益とが対立することもある。そのようなときに、価値観を共有しながら、アメリカに対する牽制球となりうるのがヨーロッパやASEAN諸国である。とくに、ヨーロッパは先進国であり、政治的にも経済的にも軍事的にも、アメリカに匹敵する力を持つ。文化の面では、はるかに長い伝統を持っている。そのようなヨーロッパは、日本にとっても大いに利用する価値のある地域である。

 ところが、外国語の習得にしても、フランス語、スペイン語、ドイツ語などを熱心に学ぼうとする日本人は減ってきている。残念なことである。アメリカのみが世界ではないし、アメリカとは違う選択肢としてヨーロッパは重要である。最新鋭旅客機ボーイング787型機は故障続きで、運行停止になっているが、ヨーロッパにはエアバスという優れた旅客機メーカーがある。エネルギー問題でも、ヨーロッパの対応は、日本にとって大いに参考となるだろう。

 先進国サミットは、日米欧三地域の連携強化を目的として始められたものであるが、最近では、日米欧三極という話をあまり聞かなくなっている。それは、ブラジル、インド、ロシア、中国などの台頭が影響しているからであろうが、国際政治・経済の面では、やはり日米欧の協調が必要である。そして、日欧関係を日米関係と同じように緊密化する努力を怠ってはならない。今回のアルジェリア人質事件は、そのことをまた私たちに再認識させている。

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