経済・財政
アベノミクスの賞味期限を考える---政局優先で見たくない現実から目をそむけていては日本経済の再生は覚束ない!
〔PHOTO〕gettyimages

 梅や桜の季節を前に、ひと足早くアベノミクスが満開の様相を呈している。先週末の市場を見ても、デフレ経済克服への期待感から、株式が10週連続の上昇となったほか、外為も1ドル=90円台前半と2年7ヵ月ぶりの円安になった。

 先週末(18日)の株高円安を演出したのは、麻生太郎副総理・財務・金融担当大臣ら政府首脳と白川方明日銀総裁との会談だ。2%のインフレターゲット(物価目標)や失業率の改善を盛り込んだ両者のアコード(政策協定)が本決まりになりつつあると市場が感じ取ったという。冷え込んだ企業や投資家、消費者のマインドが改善するのは歓迎すべきこと。続けば、多くの人が幸せになれる。

 しかし、冷静に考えてみてほしい。日銀と政府のアコードは単なる目標だ。しかも、金融政策だけでは、首相の唱えるアベノミクスの「3本の矢」が揃ったことにはならない。さらに言えば、安倍政権は、本コラムで先週指摘した原発問題、痛みを伴う経済の構造改革にも取り組む構えをみせていない。今夏の参議院議員選挙に向けて、国論が割れる懸案を封印しておきたいという、政治家ならではの刹那に捕われているのは明らかだ。

 耳触りのよいことだけを宣伝し、不都合な真実から目をそむけているようでは、花よりも早く見ごろを迎えたアベノミクスが、本格的な花の季節を待たずに散ってもおかしくない。そのリスクを、安倍首相は自覚すべきではないだろうか。

有効需要の創出と経済の構造改革が急務

 まず、市場を確認しておこう。強気が圧倒的に多いように見えるが、その実、安倍政権のリップサービスに一喜一憂し、ひとつ歯車が狂えば、変調をきたしてもおかしくない危うさが共存している。

 週後半、特に18日午後は、株式、外為両市場がそろって、リーマンショックの頃の為替レートを根拠に1ドル=100円前後まで懸念の必要はない、という政府高官の発言に勇気づけられ、活気を取り戻した。日経平均株価はこの日、前日比303円66銭高の10913円30銭と、その日の高値引けを記録した。

 しかし、週半ばを振り返ると、その裏に横たわる危うさは明らかだ。円相場は16日に1ドル=88円前後の円高、株式相場は17日に1万400円台という最近の安値を付けた。弱さの陰に、「過度な円安になれば輸入物価に跳ね返り、国民生活にマイナス」(甘利明経済財政・再生担当大臣)、「円安になって困る産業もある」(石破茂自民党幹事長)といった経済通の政治家の発言が影響したことは見逃せない。市場は、期待が実現すると確信しているわけではないのである。

 実際のところ、今日まで2日間(21、22の両日)にわたって開かれる「金融政策決定会合」で、日銀が2003年5月以来、約9年半ぶりという2会合連続の金融緩和を決め、これまでの2倍の2%という物価目標を決定するとすれば、欧米に比べて消極的だった日銀の円高対策がようやく修正されることにはなる。それ自体は、評価に値する話だ。

 しかし、これだけでは、20年も続いてきたデフレ対策として無力に等しい。足りないのは、有効需要の創出と経済の構造改革だ。この2つがなければ、経済の再生は望み薄である。

 この点については、官邸に集めたブレーンによるレクチャーの効果もあるのだろう。首相自身も歯切れのよい発言をしている。今月7日の日本経団連、経済同友会、日本商工会議所の経済3団体の会合に来賓として出席し「大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間の投資を引き出す成長戦略の『3本の矢』でデフレ脱却と過度な円高を是正していく」と挨拶した。

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