「息子と僕のアスペルガー物語」 ライフ
奥村隆「息子と僕のアスペルガー物語」【第13回】
『源氏物語』の暗記にチャレンジした受験生時代

【第12回】はこちらをご覧ください。

英単語と英作文の参考書をすべて暗記してしまう

 大学入試センター試験を間近に控えた今の時期。街では、受験生たちが背中を丸めて歩いている。

 彼らの姿を目にするたびに、僕は、自分が大学受験に悪戦苦闘した昔のことを思い出してしまう。今にして思うと、そのときも、発達障害を抱える者ならではの苦労があった。

 僕が大学受験を意識し始めたのは、高校2年生も終わりに差しかかった頃だった。

 決して裕福とは言えない実家の経済状態を考えると、志望校は、地元の国立大学以外に考えられなかった。ところが、そこは、当時の僕の学力ではとても合格がおぼつかない"高嶺の花"だった。模擬試験を受けたとき、その大学に合格するのは非常に困難なレベルの低得点しか取れなかったのである。

 僕は落胆したが、くじけなかった。あれこれ考えた末、自分が持つ唯一の武器である、あの「フォトグラフィックメモリー」を駆使する勉強法を編み出した。そして、それを武器に、受験勉強に邁進しようと考えたのである。

 ただし、僕が考えたその勉強法は、後に同級生にその話をすると、「他の人間にはまったく参考にならないよ」と酷評された。今にして思うと、「他の人間」とは、「発達障害とは無縁の人間」という意味になるのだろうか。ただし、僕のように発達障害、それもASD(自閉症スペクトラム障害)を抱える受験生には、ひょっとしたら参考になるかもしれない。

 以下、そのやり方を紹介していくが、仮に読者のどなたかが実際にやってみて受験に失敗したり、志望校に合格できなかったりしても、僕には一切責任は取れない。そのつもりで読んでください。

 当時、僕が目標にした大学の入試は、文系か理系かにかかわらず、数学、英語、国語が必須科目だった。そして、理系学部を志望する者は理科系科目(物理や化学など)から2科目を、文系学部を志望する者は社会系科目(日本史や世界史など)から2科目を選んで、受験することになっていた。