中国
安倍首相と鳩山元首相のニュースを、中国人はどう捉えたか?

 1月17日、中国が、日本の現首相と元首相のニュースを並べて報道した。標題はそれぞれ次のようなものだった。

〈 日本の元首相鳩山由紀夫が南京の大虐殺記念館を訪問し、日本の南京大虐殺の行為に謝罪を表明 〉

〈 日本の首相安倍晋三がベトナムを訪問し、中国対策を共闘して吹聴 〉

 鳩山元首相に関するニュースは、次のような内容だった。

〈 1月17日午前、鳩山由紀夫元首相は南京大虐殺記念館で銀杏の樹を植樹し、「この平和の花が咲く時に再訪したい」と述べた。鳩山元首相はまた、南京大虐殺記念館で「友愛和平」と揮毫し、鳩山由紀夫の「由」の字をあえて「友」と変えた。そして朱成山館長に「この『友』の字に意味があるのだ」と説明した。鳩山は、村山富市、海部俊樹に続く3人目の元首相の南京虐殺記念館への訪問者となった。

 鳩山元首相は16日には贾慶林・全国政治協商会議主席と会談し、「日本政府は『尖閣諸島に領有権の争議はない』と主張するが、中国もこうして領有権を主張しており、争議はあるではないか」と述べた。鳩山元首相に続き、22日に山口那津男公明党委員長が、28日から31日までは村山富市元首相と加藤紘一日中友好協会会長が訪中する 〉

 また、安倍首相に関するニュースは、次のようなものだ。

〈 1月16日、安倍首相は昭恵夫人と、ハノイに降り立った。今回の東南アジア歴訪は、中国の沿海に「弧」を描くための行程だ。安倍首相はドン首相主催の晩餐会で挨拶し、「共同で中国の海洋への影響力強化に対応していこう」と述べた。

 6年前には安倍首相は首相就任の翌月に訪中し、「破氷之旅」を行ったのに、6年経ったいまは、まったく違う方針を見せた。麻生太郎副首相、岸田文雄外相を含めれば、8ヵ国を訪問したことになり、「中国包囲網」と理解すべきだろう 〉

またもや毛沢東語録を引き合いに出した習近平

 中国の論調は当然ながら、「正しい鳩山と誤った安倍」というものだ。

 これに対し、この現首相と元首相の、いわば相反する"行動"について、日本のメディアは「中国の手口に乗せられて、鳩山はけしからん!」という論調一色だった。

 だが私は、果たしてそうだろうかと思った。つまり、鳩山訪中は日本にとって、プラスとなった面もあったのではないかと思うのだ。

 それは、こういうことだ。

 1月3日発売の『南方週末』の正月社説が書き換えられた問題は、中国政府の言論弾圧として日本でも話題になったが、中国国内でも瞬く間に広まった。「民主と憲政を求める」と書かれていた当初の原稿が、「いまほどチャイニーズ・ドリームの実現に近づいた時はない」と書き換えられた事実は、中国でも周知となったのだ。折から、「インターネット実名制」が発表されたばかりで、5億人を越すと言われる中国のネチズンたちは、不満たらたらなのである。

 この時、習近平政権が取った措置も、私が想定していたものだった。

 習近平総書記は元旦の政協新年茶話会で、「正月講話」を述べた。その際、またもや毛沢東語録を引き合いに出した。

 習近平総書記は15歳から22歳まで、陕西省の農村地区に「下放」されている。この貴重な青春時代の7年間に読んだ本は、おそらく毛沢東語録だけだったのではないか。この時の原体験が、「習近平思想」とも言うべき根幹を形作っている。平たく言えば、習近平総書記は「ミニ毛沢東」なのである。

 元旦に引用した毛沢東語録は、1934年に江西省会昌で毛沢東が詠んだ詩の一部、「東方欲暁、莫道君行早。踏遍青山人未老、風景這辺独好」(東方の朝焼けの向こうの未知なる地に我は行く。青山を踏み越えても私はまだ年老いていない。その風景は独特でよいものだ)。習近平総書記は、「この毛主席の言葉の通り、中国の特色ある社会主義は、人民を美しい事業へと導くものだから、『衆人拾柴火焔高』(多くの人が柴を拾えば炎は高く上がる)の精神をもって、偉大なる中華民族の復活を実現させるのだ」と説いたのだった。

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