浜田宏一「人口構成がデフレの要因だという日銀の愚かな責任逃れ」
『アメリカは日本経済の復活を知っている』より第3回

人口はデフレの要因なのか

 日銀は「人口がデフレの要因である」ことも主張したいらしい。ところが、人口をデフレに結びつけるのは、理論的にも実証的にも根拠のないものだ。もちろん人口は成長の要因にはなるが、実質生産に、人口あるいは生産年齢人口が影響するのは当たり前のことである。

 しかし、貨幣的現象である物価、あるいはデフレに人口が効くというのは、経済の解剖学すなわち「国民所得会計」から見ても、生理学すなわち「金融論」から見ても、まったく的外れな議論だ。医学の発達した社会で、床屋での素人談義で患者の診断と治療法を決めようとしているのが日銀の姿なのだ。

 日銀が国際会議等で示す研究成果もレベルが低い。統計学の講義のいちばん初めに注意されることだが、偶然グラフに数字が都合よく出てきて、あたかも関係があるように見える、「見せ掛けの相関」を使ったりする。たとえば嘉悦大学教授の髙橋洋一氏が指摘しているように、三三ヵ国のうちから都合のよい二四ヵ国だけを選ぶという、統計学上における一種のカンニングを行ったりしている。経済の「治療」に当たる医者がやるようなことではないだろう。

 二〇一二年五月には、国際会議「人口動態の変化とマクロ経済パフォーマンス」を開催。ここでも日銀は、できそこないの学生レポートのような統計を世界の学者に討議させている。総裁挨拶での、「人口動態とデフレというと、一瞬、その論理的関係が理解しにくいかもしれませんが」という言葉は、一瞬どころか何万年考えても意味をなさない。

 人口構成がマクロ経済に関係があるのはもちろんだが、現在の経済学では、デフレの原因とは決して結びつけることはできない。ここにも、総裁の主著『現代の金融政策』(日本経済新聞社)の各所に見られるように、日本銀行の都合で経済学を書き換えてしまう一例がある。

 このようなまやかしの手法を使った日銀正当化のために、果たして国税を使って国際会議など開催してよいものだろうか。

 要するに日銀は、「金融緩和を充分にしない」という追及からのがれるため、貨幣量でなく、人口構成がデフレの原因だと言い訳しているのだ。

 人口構成の問題だけではない。金融拡張しない理由として財政問題を使うのも、言い訳のひとつである。自分の責任である通貨管理のことを通り越して、財務省所管の財破綻を防ぐために、親心で、日銀が所管外の財政破綻を防ぐため努力している、そのため金融政策がおろそかになると言い訳するのだ。

 
◆ 内容紹介
ノーベル経済学賞に最も近い経済学の巨人、研究生活50年の集大成!!
この救国の書は、東京大学での教え子、日本銀行総裁・白川方明に贈る糾弾の書でもある。20年もの間デフレに苦しむ日本の不況は、ほぼすべてが日銀の金融 政策に由来するからだ。白川総裁は、アダム・スミス以来、200年間、経済学の泰斗たちが営々と築き上げてきた、いわば「水は高いところから低いところに 流れる」といった普遍の法則を無視。世界孤高の「日銀流理論」を振りかざし、円高を招き、マネーの動きを阻害し、株安をつくり、失業、倒産を生み出してい るのだ。本書で解説する理論は、著者一人だけが主張するものではない。日本を別にすればほとんど世界中の経済学者が納得して信じ、アメリカ、そして世界中 の中央銀行が実際に実行しているもの。世界から見れば常識となっている「日本経済の復活」を、著者50年間の研究成果をもとに、わかりやすく徹底解説!