2013.01.24(Thu)

私がブックオフの社長としてやりたいこと〜松下展千氏インタビュー

週刊現代
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'91年に創業し、古書店のイメージを一新した『ブックオフ』。CD、DVD、ゲームなども買い取り・販売し、最近は携帯電話、古着など本以外の商品に力を入れ、売り上げを伸ばしている。現在のトップは松下展千氏(44歳)。'03年にみずほ銀行から同社へ転職、'11年から社を率いる青年社長だ。
 

 
私が息子に買ったグローブ、あまり使わなかったんです。 でも、まだモノとしての命は終わっていない。 弊社は、こういった品に再び活躍の場を与える、プラットフォームでいたい。まつした・のぶゆき/'68年、福島県生まれ。'91年に成蹊大学経済学部を卒業し、日本興業銀行(現みずほコーポレート銀行)へ入行。'03年にブックオフコーポレーションへ入社し、'11年9月より現職。少年時代に合唱をしており、特技はその良く通る声で「にぎやかな居酒屋でも店員さんを逃さず注文できること」とか

4代目社長

 子どもの頃は、我が道を行くわけでなく、ガキ大将でもなく、ひたすらまわりの目を気にするタイプだったんです。いつも〝自分は今、何を求められているか〟を考えていました。そんな少年時代が、経営者としての礎になっているかもしれない、と思います。

座右の銘

 昔から本は好きでした。中学生の時、実家にあった吉川英治先生の三国志を読みふけり、その後は、松本清張先生の推理小説、山岡荘八先生の歴史小説などを好んで読みました。

 好きな言葉は、古代中国の高官・楊震が賄賂を渡されそうになった時に放った台詞です。「天知る、地知る、我知る、子知る」―隠し事などできない、誰が見ていなくても、恥じる事のない振る舞いをしよう、という意味だと考えます。この心があれば、人生、間違うことはないでしょう。あと、何かあった時、ごめんなさいと素直に謝る力の源泉にもなると考えます。

安全策

 '91年に銀行へ就職し、約5年間、証券部門に在籍し、今後の金利の動向を予測する仕事などを担当しました。記録的な円高低金利が始まった時期です。その時、お金について様々考えました。実は私、今もまったく財テクはしないんです。もし今、私にお金があれば外貨に換えると思います。日本がしっかりしていれば、円高で資産が目減りしても本業で稼げる。一方、円安になれば資産が増えるからです。

店長と 社長が「社員にも喜んでもらえる会社を目指す」と公言していることもあり、全国の店長は意気盛んだという。写真左が松下氏

タフになれ

 思い出深いのは、銀行入行1~2年目、時間がなくて企業への融資に必要な書類が作れなかった時、先輩に言われた言葉です。「オマエ、融資先の会社に何人の従業員の方がいて、その家族の方も含めるとどれだけの人数になるか考えたことがあるか? だいたい、オマエ寝ただろ? しかも布団で!」と怒られました。プロ意識とは何かを教えられた、忘れられない言葉です。

他人の視点

 20代後半から7年間、ベンチャー・中堅企業への貸し付けを担当しました。私が考える〝伸びる企業の条件〟は、まず、社長サンの情熱を共有しているチームがあること。しかし、ここまではできている企業が多いんです。もっと重要なことは、サポート役のNo.2がしっかりしていて、トップが自分だけの視野にとらわれていないこと。ただし、これが難しい。

プレーヤーへ

 ブックオフへ入社したのは、勤めていた銀行の取引先、という縁あってでした。私は新卒の時、「天下国家の為、公の為に仕事がしたい」と勢い込んでいたんですね。そして、融資担当になり、ビジネスを通して社会を変えられている方に事業計画をご提案するうち、いつしか、私自身がやってみたくなったのです。

個を活かす

 トップの仕事は、ひと言にまとめれば、社員に理念を伝えることだと思います。当然ですが、トップが、常に現場にいて細かい指示を出すことなどできません。しかし、例えば店長と〝我々が何を目指すか〟〝どんな考え方をするか〟が共有できていれば、店長は個性を活かして店を作り、接客してくれます。

飲み会 普段から意識的に社員と触れあう場を設け、宴席を囲むことも多い。写真右から2人目が松下氏

赤ら顔

 弊社は年に2回、経営陣と社員が話し合い、お酒も飲む会を開催しています。経営陣の顔が見えたほうが、理念も伝わりやすい。私は笑い上戸でよくしゃべるのですが、そんな姿を社員が見て「社長、酔っぱらって顔が真っ赤だったよ」などと言ってもらえるような、現場で働く人にとって近しい存在でありたいんです。

グローブの命

 私もよく『ブックオフ』を利用しますよ。最近は、子ども向けのグローブを売りました。以前「息子とキャッチボールがしたい」と買ったんですが、息子はサッカーにはまり、10回位しか使いませんでした。そのまま、息子が成長し、もう使う機会はありませんが・・・・・・このグローブ、まだモノとしての命は終わっていませんよね。そんな品に、再び活躍の場を与えるためのプラットフォームが弊社なのだと思っています。

 休日は、お休みだからこそ早起きし、本や雑誌を読んでいます。子どもと遊ぶのも好きです。最近、恩田陸さんの『夜のピクニック』に影響され、子どもたちを「横浜まで歩こう!」と誘い出しました。自宅からの道のりは30~40km。結局、途中で挫折して電車に乗って中華街に行き「やっぱり電車はすごい」などと話しながら食事をしました。

 他愛ありませんが、子どもとこんな風に遊べる時間は二度と来ません。私は〝今、この時間を大事にすること〟が、時間の良い使い方なのかな、と思っています。

今がすべて

 もうひとつ、時間を大切にするコツがありました。「集中力を高める」ことです。私は子どもの頃、算数のテストでよくケアレスミスをし、親に「テストの答案を書いたら見直しなさい!」と怒られていました。しかし、思いこみが激しい性格だからか、いったん問題を解くと「これが正解」と思いこみ、見直せないんです。そこで考えたのが、集中力を高める方法。計算中「これは5+1だよね、ここに入る数は6だよね、6だよね、6だよね!」と目の前のことに集中したんです。すると、見直さなくてもよくなった。今でも、仕事中、よく実践しています。

LOVE

 弊社が最近、掲げたメッセージは『LOVE USED』。これは和製英語で、実際は「使い古された愛」といった妙な意味になってしまうのですが、わかりやすいからよいのでは、と気に入っています。現在は携帯電話の買い取りに力を入れており、さらには衣料品の買い取り・販売も伸びています。基本的に、リサイクル率、リユース率が高い社会は、よい社会だと思います。実は、私の家族も、みんな中古の携帯電話を使っているんですよ。

(取材・文/夏目幸明)
『週刊現代』2013年1月26日号より

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