総選挙は自由民主党の圧勝に終わった。今回の総選挙では、安全保障の問題が重要な争点の一つとなった。尖閣諸島や竹島をめぐる中国、韓国との軋轢、北朝鮮の核開発・ミサイル発射問題など、東アジアでの国際的な緊張が表面化し、安全保障の問題が人びとの関心を集めている。
他方、人口密集地域にある普天間基地の危険性や、オスプレイ配備、米軍兵士暴行事件など、沖縄における米軍基地の存在も、大きな問題として取り上げられている。
安全保障について近年の各種の世論調査をみると、時期によって多少の変動はあるが、日本の安全保障にとって日米安保条約を必要とする意見が国民の大多数を占めている。一方で、先のような問題から沖縄における米軍基地の存在に批判的な意見も、それに劣らず大きな割合を占めている。ところが、沖縄の米軍基地は日米安保条約に基づいて存在している。日米安保条約はアメリカによる日本での基地使用を認めているからである。
国民の多くは、日本の安全保障と米軍基地の存在とのあいだで、深刻なディレンマに陥っているといえる。
このような現状から、現在の東アジアをめぐる国際環境のなかで、そもそも日本の安全保障はどのようにあるべきなのか。そのことが多くの国民の関心事となってきている。日本の安全保障のあり方が、あらためて根本から問われているのである。
ところで、最近の内外の政治・経済・社会状況は、両大戦間期に類似するところが多いのではないかと、たびたび指摘されている。そこで、最近出版した拙著『戦前日本の安全保障』(講談社現代新書)では、その問題を考えていく一つの手がかりとして、両大戦間期の日本を代表する政治家・軍人として、山県有朋、原敬、浜口雄幸、永田鉄山の四人を取り上げ、その安全保障構想を検討した。
そのなかで、筆者個人としては、とりわけ浜口の構想に関心を引かれたので、この機会に、浜口構想のエッセンスを紹介し、筆者が関心を引かれたわけにもふれておきたい。