官々愕々
アベノミクスが復興を遅らせる

〔PHOTO〕gettyimages

「アベノミクス」が大ブレークしている。金融緩和、財政出動、成長戦略(規制改革)の「3本の矢」からなるという触れ込みのアベノミクスだが、就任前から円安と株高が急速に進み、経済再生を最優先課題としている安倍政権としては最高のスタートになった。

 一般には、金融緩和が進めば、円安・株高につながり、輸出・消費・設備投資が増加する。これが続けば、少し遅れて雇用増加と賃金上昇が伴う本格的な景気回復に至る。現在は市場が、アベノミクスの第1の矢、金融緩和をはやして円安・株高が進んだ段階だ。

 日銀が市場から国債を買い入れて資金を市場に放出し、お金がジャブジャブな状況を作り出す中で、アベノミクスの第2の矢は、国債を財源とする公共事業の大盤振る舞いだが、これは今年度補正予算と来年度予算で確実に実現するだろう。

「公共事業ばら撒き復活!」という批判も出ているが、自民党は、「国土強靭化」の美名の下、「復興」と「防災・減災」を免罪符にして乗り切ろうとしている。しかし、もっと重大な問題がある。それは、公共事業の大盤振る舞いが、かえって東北の復興を遅らせ、しかも数年後の不況につながる可能性があるということだ。

 公共投資は、'95年度のピークから2011年度にかけて40兆円から20兆円に半減した。その間、建設業界では大規模なリストラが実施され、建設業就業者数は、685万人から500万人割れまで大幅に減少した。

 こに大震災で復興特需が発生した。建設業界では、すぐに人手不足となり、資材価格も上がった。関連業界にとっては嬉しい悲鳴だが、これが足かせになって復興事業が遅れ、そのコストも極端に高くなってきている。ここで国土強靭化計画を実施すれば、人手不足と建設コスト増加を助長し、東北の復興を一層困難にしてしまうだろう。

 本来は、復興最優先という方針を立て、その期間中は、他の地域での公共事業は抑えて被災地を助けるというのが正しいやり方だ。緊急時ほど「選択と集中」が必要なのにそれができない。何をやるかという議論はしても何をやめるかという議論は全く出てこない。被災地のことなどおかまいなしだ。

 もちろんこれは、総選挙での大量当選御礼と夏の参議院選への協力依頼のための自民党から建設業界へのばら撒きである。官僚の便乗もすごい。各省は、数字積み上げのために優先度が低いスジ悪の案件まで集めて要求を出しているという。若手官僚から「悪乗り」と批判の声が上がるほどだ。

 さらに心配なのは、このブームで、せっかく減少した建設労働者の数がまた大幅に膨らむことだ。賃金が上がれば必ず就業者は増える。このバブルが数年続いた後に、公共事業予算の削減をしたらどうなるのか。そこには再びリストラ必至の建設不況が待っている。

 今やるべきは、既にバブルの様相を呈している建設業にカンフル注射を打つことではない。再生可能エネルギーや農業、医療など将来性のある分野への投資に重点化することだ。そして、既得権と闘う改革を進め、民間主導で新産業が大きく成長する道筋をつける。まさに成長戦略の分野だが、ここでも、ばら撒き政策は見えても、民間の活動を活発化するための大胆な規制改革は言葉だけで、発送電分離さえどうなるかわからない。

「3本の矢」のうち、1本目の金融政策ではうまく行っている安倍政権だが、財政政策と規制改革という残り2本の矢は的外れな方向に飛ぶのではないか。

 そんな不安は「的外れ」だった、ということになれば良いのだが。

『週刊現代』2013年1月26日号より

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