特集 安倍政権再び 高揚感なき政権交代
「危機突破内閣」は期待できるのか

会談に臨む安倍晋三自民党総裁(右)と山口那津男公明党代表=国会内で12月18日

 第2次安倍晋三政権がスタートした。自民党は連立を組む公明党と合わせて衆院で325議席を持ち、参院で否決された法案を衆院で再可決できる3分の2(320議席)を超える強力な与党体制を確立。安倍首相は圧倒的な数を背景に「危機突破内閣」を作り、まず10兆円規模の大型補正予算を編成した後、官邸主導で低迷する経済の立て直しに着手。さらに日米同盟関係、戦後最悪の日中、日韓など行き詰まった外交問題の再構築に乗り出す。しかし、これほどの劇的な政権交代でありながら国民に高揚感はない。永田町の関心はすでに夏の参院選にシフトしている。再び不安定になる政治情勢の中で、政策の前進が阻まれるおそれもある。

 昨年の師走総選挙で自民党は294議席を獲得し大躍進した。それにもかかわらず安倍氏の表情は硬かった。むしろ選挙前の党首討論や記者会見の時の方が顔を紅潮させて、積極金融緩和策や長年の持論の憲法改正などを唱え覇気に満ちていた。喜びを抑えているようでもなかった。

 一つの理由は、開票結果から自民党は獲得議席ほど国民の支持を得ていないことだ。

 12政党の乱立で政策の争点がぼけたためか、総務省によると、小選挙区の確定投票率が59・32%と、過去最も低かった96年衆院選の59・65%を下回り戦後最低を更新した。「政権交代」が焦点だった09年の69・28%より10ポイント近く低かった。

 自民党は今回、オセロゲームのように勝敗が覆りやすい小選挙区で237議席と圧勝した。しかし比例代表では57議席と、小泉純一郎政権時の「郵政解散」で大勝した05年衆院選の77議席に比べると20議席も下回った。119議席の大敗で政権を失った09年衆院選の比例代表ですら55議席で、それをわずかに上回るに過ぎなかった。

 全国の比例得票数を集計すると、自民党は1662万票で、05年の2588万票を大きく下回った。09年ですら1881万票と今回より多かった。得票率は27・6%で、09年の26・7%とほぼ変わらなかった。

大敗の衆院選結果を受け記者会見に臨む野田佳彦首相(当時)=東京都港区で12月16日

 さらに、自民党の小選挙区候補の得票数を合計すると2564万票で、09年より165万票減っている。投票率が下がった影響もあるが、民主党と第三極の多数の政党が票を奪い合ったために、自民党の獲得議席を後押ししたとみられる。このように自民党に対する支持が、大量得票ほど多くなかったことが分かる。

 安倍氏は投開票翌日の記者会見で「今回のわが党の勝利は、自民党への信任が戻ってきたのではなく、3年間の民主党による政治の混乱と停滞に終止符を打つという国民の判断だった」と勝因を分析した。そのうえで「自民党に厳しい視線は注がれ続けている。緊張感を持って前に進み、結果を残していかなくてはならない」と身を引き締めていた。

 安倍氏には07年夏の悪夢がよみがえることを警戒している。第1次安倍政権は、年金記録漏れや「政治とカネ」、顕在化してきた格差問題などへの影響で国民の支持を失い、参院選で大敗を喫し、後の民主党による政権交代への下地を作った。続投したものの内閣を改造して1カ月で病気を理由に退陣したことは記憶に新しい。体調について記者から聞かれた安倍氏は「潰瘍性大腸炎は完治していないが、新しい薬でコントロールできている。(激務に)十分耐えられる」と強調した。

 総裁選で戦い、路線の食い違いが垣間見える石破茂幹事長を、選挙の「顔」として早々に続投させることを決めるなど、安倍氏は夏の参院選に向けた体制固めをしたのも、悪夢の再来を恐れているからだ。

折り合い付けた自公政策合意「原発依存 徐々に低下」

 自民党は単独で常任委員長ポストを独占できる安定多数を獲得したが、既定路線だった公明党との連立で、3分の2条項を行使できる大与党を形成した。

 自民、公明両党は連立政権の政策合意で、隔たりがあった原発の扱いについて「徐々に原発依存度を下げる」ことで折り合った。

 公明党は衆院選の公約で「原発の新規着工を認めず、40年運転制限制を厳格に適用し、可能な限り速やかに原発ゼロを目指す」と、明確に脱原発を掲げていた。

 これに対し、経済界の要請で電力の安定供給を重視する自民党は政権公約で「全原発の再稼働の可否は3年以内の結論を目指す」「遅くとも10年以内には持続可能な電源構成のベストミックスを確立」と判断を先送りしていた。両党の政策には明らかに溝があったが、公明党が「原発依存度を下げる」ことを明記することで譲歩した形だ。

 また、「国防軍を保持」など安倍カラーを鮮明にしている憲法改正については「衆院憲法審査会の議論を促進する」と、自民党側は折り合った。

 安倍自民党は、参院選を意識して、数を頼んだ強硬な政権運営は慎もうとする姿勢を見える。

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