『八重の桜』が好スタート! 歴史を生き抜いた人々を活写する、大河ドラマの新しい一歩にこめられたメッセージとは

 NHKの新大河ドラマ『八重の桜』がスタートした。初回の視聴率(関東地区、以下同)は21.4%で、これは相当高い。初回の数字だけで比べると、前作の『平清盛』の17.3%を上回り、前々作の『江・姫たちの戦国』の21.7%にはおよばなかったわけだが、単純比較は出来ない。条件が違い過ぎるからだ。

 『平清盛』の視聴率は平均12.0%で史上最低。最終回も9.5%で過去最悪。すっかり視聴者が離れてしまった時間帯で、再び20%台を回復したのだから、表面上の数字よりも重みを持つだろう。

 「正直なところ、ホッとしました」と本音を明かすのは制作統括の内藤愼介エグゼクティブプロデューサーだ。

 「いい作品が出来ているという自信はありましたが、それが視聴率に結びつくとは限りませんから。しかも山本八重は歴史的に無名。初回の視聴率が分かるまでは関係者全員が不安でした」(同)。

 内容の評判も上々。とりわけ八重の子供時代を演じた鈴木梨央ちゃん(7)の溌剌とした演技が好評だった。NHKの松本正之会長も定例会見でわざわざ「演技が確かで愛らしさがあった」とべた褒めしたほど。これまで無名の子役だったが、内藤氏は「だからこそ起用しました」と舞台裏を明かす。

 「子役のスターは少なくありませんが、無名だから物語にスーッと溶け込んでくれました。本物の八重に見せられた。書類選考を含めると、500人以上の候補者を見させてもらい、その上で梨央ちゃんに決めました」(内藤氏)

 だが、残念ながら梨央ちゃんの出演は13日放送の2話まで。あくまで八重は綾瀬はるかなのだから。

現代人は古き良き美徳を追い求めている

 好スタートを切れた理由を内藤氏自身に自己分析してもらおう。

 「ご覧になっていただけた方には、会津藩の教育が心地良かったのではないでしょうか。年長者の言うことには従う、卑怯な振る舞いはしない、嘘は付かない・・・日本人にとって当たり前のことだったのですが、どこかで置き忘れてしまいました。近年、この当たり前の道徳を描いたドラマはありませんでした」

 実は、一つ間違えると、時代錯誤と受け取られかねない物語だったのだが、視聴者は受け入れている。この現象は「ヨイトマケの唄」が大反響を呼んでいることと結びついている気がする。

 この歌を美輪明宏が昨年大晦日の『紅白歌合戦』で歌うと、年配層が賞賛したばかりでなく、若者たちまでツイッター上などで絶賛した。長幼の序や誠実の大切さを説く会津藩の教えと、親子愛と労働の尊さを訴える46年も前の歌。現代人は古き良き美徳を追い求めているのではないだろうか。

 汗をかかずに儲けることが正しいとされたバブル期のあと、何もかもうまくいかない時代が続いているから、「日本人とは何か?」という原点回帰が始まっているように思える。八重たちの時代と違い、指導者層が頼りなく映るから、なおさらではないか。内藤氏も「大河とは単なるドラマではなく、自分たちがどこから来たのかを確認する時間だと思っています」と語る。

 会津藩の人たちを演じる出演陣は、「品格のある役者さんたちにそろってもらいました」(内藤氏)という。役者選びで品格を基準にするとは、あまり聞かない話だが、なぜ?

 「そうじゃないと、こんな世知辛い時代なので、道徳的な言葉が嘘っぽくなります。たとえば、『正しいことは、正しい』という八重のセリフは、綾瀬はるかさんのような人が口にするからこそ、説得力を持つ。しかも現代劇だと、やはり嘘っぽく、時代劇だからいい」(同)

 モラルの感じられない役者が道徳を訴えてもリアリティーがない、というわけだ。役者たちに本当に品格があるかどうか確かめたい向きは、実際にご覧になっていただきたい。

 福島県出身者の演技も見ものの一つだろう。会津藩家臣・西郷頼母役の西田敏行、同じく田中土佐役の佐藤B作、会津藩家老家の山川艶役の秋吉久美子---。このドラマは震災と原発事故で二重の苦しみを背負わされた福島を激励する意味合いも持つ。

 内藤氏によると、3人のベテランの意欲は並々ならぬものだという。未曾有の悲劇に見舞われた郷土を役者が思いやる際、どんな演技を見せるのか。実力十分の3人だが、それを超える力が引き出されるかも知れない。

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