[サッカー]
田崎健太「里内猛が描く日本の未来図Vol.3」

~ジーコ、オシム、関塚を支えたフィジコ~
スポーツコミュニケーションズ

ジーコが怒った試合前日の食事

住友金属時代の集合写真。最前列左がジーコ

 ジーコが来日して間もなく、静岡で日本リーグに所属していたヤマハ(現磐田)、ホンダ、古川電工(現千葉)、日本鋼管の5チームが集まって練習試合中心の合宿を行ったことがあった。試合前日、里内は昼食会場となっていたホテルの食堂に行くとジーコが声を荒げているのが聞こえた。
「これは何だ?」
「うどんです」
「これはサッカー選手の食事じゃないよ」
「うどんって、何て説明すればいいかな……日本のパスタのようなものです」
 通訳が必死でうどんの説明を始めると、ジーコは「そんなことは分かっている!」と真っ赤な顔で遮った。
「試合の前日にこんな軽いものじゃ駄目だろ。チキンだよ、チキン。チキンとパスタを用意してくれ」
 周囲の人間はジーコの意図が分からず、顔を見合わせていた。サッカーに限らず、当時の日本スポーツ界では食事管理の意識が低かったのだ。その後、ジーコの意見を取り入れ、住友金属は食事を見直すことになる。

 翌日の練習試合は、ジーコが来るというのでグラウンドの周囲には沢山の観客が集まっていた。3000~4000人は集まっていただろうか。「さすがサッカーの盛んな静岡だ」と里内は思った。
 当初、ジーコは第1試合に出る予定はなかった。ところが住友金属が劣勢になっているのを見ると、負けず嫌いの彼ははいてもたってもいられなくなったのだろう、里内の方をちらりと見てベンチから立ちあがった。