日本を元気に!伝統芸能「阿波踊り」でフランスを鼓舞する一大プロジェクト

 パリでこの原稿を書いている。この時期にフランスにやって来るにはもちろん、理由がある。その説明は後述する。

 日本ではいま安倍晋三首相が望んだ早期訪米が叶わず、最初の外遊先がベトナム、タイ、インドネシアの3ヶ国に確定したことが話題になっているはずだ。祖父・岸信介元首相が首相就任3ヶ月後の1957年6月に初の外遊先に東南アジア6ヶ国を選んだことと、結果的に同じことになった。

 安倍首相が強く望んだ1月28日召集通常国会前のオバマ大統領との日米首脳会談が実現しなかったのは、オバマ2期目政権の閣僚人選が遅れていることもあるが、実は日本側にも問題があったからだ。オバマ大統領が安倍首相にTPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉参加を正式決定するよう求めることはハッキリしていた。だが、7月の参院選を考えると、自民党政権にとってこの時期の公式表明はできない相談だ。「日米同盟の再構築」を言い募ってきた安倍氏からすれば、きちんと対米アプローチをしているところを見せる必要があったのではないか。

 クリントン国務長官が職務復帰したことで18日の日米外相会談(ワシントン)が決まり、当面の対米交渉は岸田文雄外相に任せ、自らはアジア外交に専念する腹積もりだというのだ。東南アジア3ヶ国訪問でどのような「成果」をアピールできるのか分からない。祖父のように「対米一辺倒ではなくアジア重視」と言うわけにはいくまい。

日仏 一大プロジェクト

 そこでフランスである。フランソワ・オランド大統領が3月に日本を公式訪問する。昨年5月、第五共和制第7代大統領に就任したオランド氏は、「国民統合」、「公正」、「若者」等を軸に社民主義路線の政策を展開、当初は支持率も高く、滑り出しは順調かに見えた。ところが、8ヶ月たった今、第五共和制下で最も不人気な大統領だったサルコジ氏の支持率を下回ってしまった。フランス経済状況は改善せず、失業率は10%を超えていることが最大の理由である。そうした中でのオランド訪日なのだ。

 筆者は、実はいま日仏間のプロジェクトに関わっている。阿波踊りを2014年6月のパリ音楽祭開催に合わせてパリっ子に、例えばシャンゼリゼ通りを踊り手で席捲、披露するというものだ。このプロジェクト立ち上げの契機となったのは、2人のフランス人が昨年夏に徳島市を訪れ、阿波踊りに出会い感動したことにある。両氏は共に日本滞在が長く、伝統芸能に通じた知日派である。だが、あの踊りと鳴り物のコラボの素晴らしさは想像をはるかに超えていたというのだ。

 当時の日本経済の閉塞状況は、在日仏人ジャーナリストとビジネスマンの2人にとって堪え難いもので、あの感動的な阿波踊りをフランス人に紹介して日本への観光客を増やすことができればとの一念で、筆者に相談があったのだ。同県選出の仙谷由人前衆院議員に話を持ち込んだところからスタートした本企画は、地元の徳島新聞社、徳島商工会議所を筆頭に多くの人と組織法人の賛同を得て有力企業、そして外務省と朝日新聞社が後援することになった。

 どうせなら徳島の阿波踊りだけでなく、東京・高円寺の阿波おどりの連を含めてやろうということになり、総勢500から1000人規模の踊り手を引き連れてパリに乗り込むという一大プロジェクトである。当初の意図は日本を“元気にする"というものであったが、現在のフランス経済情勢を考えると、逆にこの阿波踊りパフォーマンスで沈滞気味の同国を“鼓舞する"ことになる。そんなわけでパリに滞在しているのだ。

 それはともかく、口卑しい筆者は、5年ほど前からどうしても食したいフランスのジビエ料理に強い拘りをもっている。ブルターニュ地方で、しかも冬の限られた期間のみ捕獲が認められている野鳥オルトロン(ズアオホオジロ)のローストを、この機会に食べるために来たと言ってもいい。本稿を送った後、先のジャーナリストが紹介してくれた仏紙フィガロの文化部長が案内してくれるレストランで、夢にまで見た念願のオルトロンに出会えるのだ。サルバドール・ダリがこよなく愛したのが、この野鳥オルトロンである。

 対米、対アジア関係が重要であることは認める。が、フランス、ドイツ、英国など対欧関係深化もまた必要だ。安倍首相に、この「阿波踊りin Paris」プロジェクトの理解を求めるべく働きかけたい。

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