スポーツ

Close up〝前手ギュン打法〟で世界を驚かす
松田宣浩 福岡ソフトバンク「ジャパンのサードは任せろ!」

2013年01月13日(日) フライデー
friday

「そうならないように、'09年の秋季キャンプから取り入れた練習が『後ろからのティー』だったんです」

 解説が必要だろう。ティーバッティングを行う際は、自分の斜め前からボールを放ってもらうのが通例である。だが、松田は自分の真後ろからボールを投げさせて、そのまま前方のネットに打ち込むのだ。ホークスのキャンプや試合前練習ではおなじみの光景だ。

「ボールを斜めから見るのではなく、真後ろから〝長く〟見るんです。なおかつ、決してボールを追いかけてはいけない。体重が軸足(右足)に残っていることを確認しながら打つんです」

「ケンケン」で計る好不調

昨季の公式戦での1シーン。たとえ空振りの後でもリズミカルなケンケンができていれば、好調の証だという

 体が泳がず、スムーズに体重移動するために行っているルーティン(繰り返し練習)も、またユニークである。

 球場に行けば、打席に入る前に松田が奇妙な動きをしているのを見ることができる。ネクストサークルで素振りをすると、そのまま右足1本で「ケンケン」を2~3歩するのだ。それは打席に入って空振りした後や、ファウルを打った後にもしばしば見られる動きである。

「あれが僕の調子のバロメーターなんですよ。上半身と下半身、そして体の左右のバランスがバッチリな時は、ケンケンがキマるんです。体のバランスが悪い時はうまく力を逃がしてやれず、ケンケンができない。下半身がグチャッと崩れてしまう感覚になるんです」

 まさにトップアスリートならではの、独特の感性である。こうして練り込んだ打法が(本人の中で)完成を見たのが'10年オフ。奇しくも翌年から統一球が導入されるタイミングだった。

愛車の「キャデラック・エスカレード」に乗り、気合の表情でバックを披露!

 前述したように'11年は打撃3部門でキャリアハイの成績を残し、翌'12年は死球による骨折もあり出場は95試合に留まったが、打率は初の3割超え。オフにはWBC代表候補に選出され、11月に行われたキューバとの強化試合では2戦とも「5番サード」でフル出場。本戦でも代表メンバーに名を連ねるのは確実だ。

「4年前のWBCでは、同じ野球選手なのに第三者目線で、いちファンとして日本代表を見ているだけでした。それが'11年あたりから補欠でもいいから選ばれたいと思うようになって、今では絶対に試合に出たい。打順への拘りはありませんが、ジャパンのサードは譲りません」

 今年3月のWBC本戦では、ぜひともこの男に注目してもらいたい。

〝挙動〟で魅せる---。松田宣浩とは、そんな野球人である。

取材・文 田尻耕太郎(スポーツライター)

「フライデー」2013年1月18日号より

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