モブキャストのM&Aに疑義あり!――新興企業に「反市場勢力」が群がる背景と危険性

 人気ブロガーであるやまもといちろうが、ソーシャルゲームのプラットフォーム業者であるモブキャスト(マザーズ上場)が、1月7日に適時開示したM&Aに疑義を突き付けた。買収先の株主に、元アイ・シー・エフ取締役の林聖人がいることを問題視している。

「どうしてこう、クソ株ウォッチャーや会社ごっこ界隈の人間がビビットに反応してしまう固有名詞が連なる会社を触りにいくのでありましょう」

 いかにも「(元)切込隊長」らしい口調だが、指摘している問題意識には同感だ。

 こうした企業群に興味を持たない人は、林聖人なる人物が、モブキャスト買収先のオンラインゲーム会社・エンタークルーズの株式を2・56%保有していたとしても、たいしたことはないと思われるだろう。だが、「クソ株ウォッチャー」というか、私を含めて証券事件を追ってきた人間なら、「アイ・シー・エフ(マザーズに上場していたが、上場廃止のうえ08年2月に刑事事件化)」という銘柄には、見逃せない響きがある。

新興市場のマネーゲーム

 新興市場を舞台にしたマネーゲームといえば、誰しも思い浮かべるのは06年1月に堀江貴文社長が逮捕されたライブドアだろう。だが、アイ・シー・エフは実態のないM&Aを2年間で15回も繰り返し、売上高と利益の付け替えで株価を暴騰させ、そこにITベンチャーから反社会的勢力までが群がったという意味で、ライブドアと並ぶ狂乱のマネーブームを象徴する企業だった。

 M&Aの多さは株価操縦や偽計の開示を、雇われ社長だった佐藤克が確信犯として引き受けたためで、アイ・シー・エフに群がった連中だけで当時の事件史が描けるぐらいの数だった。たとえばライブドア創業者で、同社退任後に次の“仕掛け(カネ儲け)"にアイ・シー・エフを選んだ榎本大輔、アイ・シー・エフ創業者で売却して創業者利得を得てからは公開株ブローカーとなった井筒大輔、京都の同和団体幹部から転じて仕手株の世界で名を馳せるようになった川上八巳、後にビーマップという情報会社の株価操縦事件で逮捕される梁山泊グループの豊臣春国らである。

 海千山千の彼らに、株式を握られた佐藤は、当時、30代前半の若さ。「反社会的勢力」と認定されている豊臣や、「結果オーライで稼ぐが勝ち」を公言していた榎本らの圧力に抗することなどできなかった。それを反省するどころか、当時、私の取材にこう開き直った。

「株価にこだわり過ぎだという批判は甘んじて受けます。ただ、彼ら(豊臣や榎本)の出口戦略として株価を上げざるを得なかった」

 その言葉からは、実態のないM&Aと、虚偽の情報開示で株価を上げ、それを信じた投資家を裏切り、証券市場を汚しているという贖罪の意識は感じられなかった。

 当然、佐藤のみならず、当時の同社の役員の責任も重い。

 林は、専門学校を卒業後、幾つかの会社を経てDVD流通のワン・ウィングを仲間とともに創業。同社がアイ・シー・エフに買収され、04年12月、役員に就任している。佐藤とほぼ同年の31歳だった。

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