今後4年間で半分を売却へ 財務省
優遇批判を受け3段階で家賃平均2倍に引き上げ[公務員宿舎]

市民から「ぜいたくでは」と疑問の声が上がった国家公務員宿舎=札幌市で12年1月17日

 財務省はこのほど、今後4年間で全国に1万684カ所ある国家公務員宿舎のうち、約半分の5046カ所を廃止、売却すると発表した。割安との批判がある宿舎の賃料も14年4月から3段階に分け、平均約2倍に引き上げる。値上げ幅は過去最大となる。宿舎売却により約1700億円を捻出し、東日本大震災の復興財源に充てるが、14年4月からの消費税増税を控え、根強い「公務員優遇」批判を払拭し、国民の理解を求める狙いもある。ただ、衆院選の選挙公約で、公務員人件費削減を掲げた政党も多く、公務員の待遇はさらなる逆風にさらされそうだ。

 今回の売却・賃料引き上げは、11年12月に財務省の検討会がまとめた「国家公務員宿舎の削減計画」に基づく。計画は、宿舎への入居が認められる職員を五つの類型に限定すると同時に、各省庁が必要戸数を精査。この結果、必要戸数は全国で16・3万戸となり、現在の21・8万戸から、5・6万戸を削減することが決定していた。

 その後、約1年間かけて、個々の宿舎について老朽化や耐震性、立地などを検討。廃止、売却対象は、今後4年をめどに築年数が40年を超える物件や耐震性に問題のある物件を中心に選定するなど、宿舎ごとに判定し、箇所数にして宿舎を半減することになった。東京都内の1等地の港区、千代田区、中央区などにある各省庁の局長など幹部クラスの入居する宿舎も廃止対象となる。

 一方、賃料引き上げは「宿舎は福利厚生の一環」という考え方を排除した結果だ。賃料は、宿舎建設費や維持管理費、改修費などの歳出に見合う水準を確保することとした。賃料収入と建設・維持管理費をバランスさせることで、税金投入を事実上なくし、優遇批判に応えるもので、福利厚生の側面もある大企業などの社宅制度からは遠ざかり、宿舎をいわば独立採算に仕立て直すことを意味する。

 賃料引き上げの結果、東京23区でみると、築15年以内の宿舎の場合、独身用(ワンルームに相当)は現行の月1万1000~1万3000円が、引き上げ後には1万9000円に上昇。係長・補佐向け世帯用(3DKに相当)は3万5000~4万3000円が6万3000円に、幹部向け世帯用(4LDKに相当)は、7万8000~9万2000円が14万7000円にそれぞれ上昇する。復興財源確保のために国家公務員給与を2年間削減する措置が終わるのを待ち、14年度から3段階で引き上げる。

依然として残る〝官民格差〟

 ただ、それでも民間賃貸住宅と比べると、まだ割安だ。不動産情報サービスのアットホームが調べた家賃相場によると、3DKは23区内で最も安い葛飾区でも10万2600円。公務員宿舎は引き上げ後も、なお月4万円程度安い。新宿区や渋谷区、目黒区など都心に比較的近い場所では、民間の相場は20万円を超えている。

 4LDKも、葛飾区の15万2800円より安い。新宿区などでは50万円を超えるケースもあり、都心からやや離れた場所でも20万円超が大半。ワンルームも民間賃貸では、最低でも5万5200円。約3倍の官民の格差が残る。

 財務省は「民間賃貸住宅は家主の利益も含まれ、単純には比較できない」と話すが、民間賃貸に比べると〝都内最安〟であることには変わりはない。転勤が多く、緊急時の出勤など宿舎に住む不自由さもあるが、リーマンショック以降、冷え込みが続く民間企業の雇用・賃金情勢を考えると、利益分の上乗せがない公営宿舎の恩恵はまだ残ると言える。

 また、これまでは暗黙のうちに、キャリアは都心に近い宿舎に、ノンキャリアは遠隔地の宿舎にという構図も散見された。賃料に限らず、こうした宿舎にまつわる問題を一掃することも必要だろう。

 今回の措置は国家公務員にとって厳しいものとなったが、今後も風当たりは弱まりそうにない。今回の衆院選の各党公約を見ても、政権奪取に成功した自民党は「公務員総人件費を国・地方で2兆円削減」を掲げ、連立相手となる公明党も「国家公務員の大幅削減」を打ち出している。新政権と政策ごとに連合を組む可能性のある、みんなの党は「国家・地方公務員人件費2割削減」を唱える。

 これらの公約実現には、地方自治体への地方局移管や行政事務の移譲がセットで行われると考えられ、国・地方を合わせた公務員数が大幅に減るわけではないが、公務員制度改革が「霞が関の抵抗で道半ばに終わった」との思いを抱く安倍晋三政権では、一段の待遇カットが俎上に載りやすくなるだろう。政権浮揚の必要に迫られたり、消費増税の是非を最終判断する今秋に景気回復していなければ、再び焦点となる可能性がある。

 ただ、ここのところ国家公務員の待遇が大きく低下しているのは間違いない。復興財源のため国家公務員の給与は、平均で7・8%もの削減中。新政権でさらなる追い打ちがかかれば、国家公務員からの離職、転職が増える懸念がある。

 ある省庁幹部は「部下から退職の相談が増えている」と明かす。長時間労働や休日出勤という労働環境の厳しさもあり、家族から転職を勧められる職員が増えているという。外資系など転職先によっては、10倍の給料を見込める場合もあり、有能で若い人材ほど離れて行きかねない。転勤が少なく、自宅出勤も可能なケースも多い地方公務員との不公平感も拡大している。地方は、復興財源のための給与カットも一部を除いて行われていないからだ。

 国家公務員から人材流出が続けばどうなるか。結局は、政策立案や行政執行の劣化を招き、困るのは国民だろう。国民の不信感を払拭するには透明性確保のため、割安賃料のような〝隠れ給与〟をなくすことは必要だが、改革は待遇カットを主眼とするのではなく、公務員一人ひとりの能力を今以上に発揮させる人事体系見直しや人材確保のための賃金再構築こそが重要だろう。当事者である公務員の側から、働き方を自ら改革する提案も必要だ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら