19年ぶりに越年した当初案編成
成立は5月の見通し 強まるいっそうの景気減速の懸念[予算]

 年末に衆院解散、総選挙が行われた影響で、2013年度予算案の編成は19年ぶりに越年することになった。景気の減速懸念が強まる中、新政権は切れ目のない経済対策を実行する方針で、経済対策の裏付けとなる12年度補正予算と13年度当初予算案の編成を急ぐ。

 越年予算編成は、細川護熙政権の94年度以来で、その年の予算成立は6月までずれ込み、バブル崩壊後の経済に悪影響を及ぼしたとされる。政治改革をめぐる国会審議が混乱した影響を受けたためで、今回は細川政権のような大きな懸案事項を抱えているわけではなく、6月まで予算成立が遅れるとの見方は少ない。

 当面の最重要課題となる補正予算は、1月召集の通常国会に提出し、2月中に成立させるスケジュールが見込まれる。13年度予算案は2月下旬に国会に提出し、5月の大型連休前後に成立する見通しだ。暫定予算は50日程度になる見込み。

 ただ、暫定予算は必要最低限の事業しか盛り込めないため、後退懸念の強まる景気の足を引っ張る恐れがある。自民党の安倍晋三総裁は、衆院選翌日の12月17日の記者会見で補正予算について問われ、「デフレ脱却に資する補正予算でなければならない。暫定予算の期間もカバーするものになるため、当然大規模になる」と述べ、景気下支えのための大規模な補正予算を編成する意向を示した。

 日本経済は12年7~9月期の国内総生産(GDP)はマイナス成長となり、景気減速は鮮明になっている。市場関係者の中では、10~12月期もマイナス成長になるとの指摘が多い。そのため、「景気刺激策としては、公共投資を含む数兆円規模の対策が必要だ」(アナリスト)との指摘もあり、公共事業への期待感もある。

 実際、自民、公明両党は公共事業を補正予算に盛り込む事業の柱にする方針だ。安倍氏は選挙戦でも「国がまず公共投資を行い、民間投資や雇用を引き出す」と公共事業を景気対策の柱に据える方針を繰り返し強調してきた。

 自民は民間の支出を含めて10年間で200兆円を防災・減災対策に投じる「国土強靱(きょうじん)化」計画を、公明党は10年間で100兆円を防災・減災対策に投じる「防災・減災ニューディール」を策定している。自民、公明はこれらの計画をベースにインフラの補修など公共事業の積み増しなどを検討していく方針だ。

 また、12月上旬に起きた中央自動車道・笹子トンネル崩落事故で、老朽化した社会インフラの維持・管理が問題化したこともあり、新増設の公共事業よりも、維持管理や修繕などの費用に重点を置くとみられる。民主党政権は「コンクリートから人へ」との理念を掲げて、公共事業の削減を進めてきたが、新政権は防災などを柱とした公共事業増加に大きくカジを切ることになりそうだ。

 一方、歳出が大規模になると財政健全化が後退する懸念が高まる。民主党政権は、年間の新規国債発行額の上限を「44兆円」と定めていたが、新政権が国債を増発すれば上限突破は確実だ。国の借金は12年度末にGDPのほぼ倍の約1085兆円に達する見通しだ。市場では、「借金が含む中での国債増発は、国債格下げや金利上昇のリスクを伴う」(アナリスト)という警戒感もある。

 自民党は、財政健全化の指標である国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字幅を、15年度にGDP比で半減し、20年度に黒字化する目標は堅持するとしている。しかし、国債を増発した場合に歳出増とどう両立させるかは、明確な説明はない。

 新政権が景気対策の策定を進めるのは、今夏に参院選が控えていることや、10月に消費増税の判断を迫られるためだ。消費増税は経済状況が好転しているかどうかを踏まえて判断するため、新政権が今年前半の景気を立て直せるかがカギとなる。

 安倍氏は12月16日のテレビ番組で消費増税について、「上げる方向は決めている」としながらも、「デフレから脱却できる状況になっているかを、総合的判断で決める」と述べ、デフレ脱却が引き上げの前提という認識を示した。金融危機などの非常事態でなければ増税は可能としている民主党政権より増税のハードルを高くした。

 慶応大学の土居丈朗教授は、「少子高齢化の進展で、社会保障財源の確保が大きな課題となる中、中長期の財政健全化を真剣に進めることが必要な時期に来ている。そのため、増税は予定通り進めるべきだ」と指摘する。

新政権で概算見直し

 13年度予算は、民主党政権下で進められた概算要求の一部見直しも行われる見通しだ。野田佳彦政権がまとめた「日本再生戦略」に関連する要求が凍結される可能性もあるが、「医療など成長分野として掲げている事業は、自民も民主もさほど大きな違いはない」(経済官庁幹部)との指摘もあり、概算要求の出し直しの作業を行うにしても大きな混乱は生じないとの見方もある。

 一方、自民党が、政権公約で具体的に明記した歳出削減策は、国・地方の公務員人件費削減(2兆円)と生活保護費の見直し(8000億円)程度。自民は公共事業や農林予算を拡大する方向で検討しているが、歳出を増やす事業の財源をどう捻出するかは不透明だ。

 来夏の参院選を前に、ただでさえ遅れている予算編成が順調に進まないと、参院選の勝敗に影響を及ぼす可能性もあるため、「ばらまき批判を避けて公共事業を急拡大するようなことはない」(内閣官房幹部)との見方もある。

 民主党は09年の衆院選で大規模な予算の組み替えや歳出削減で新たな財源を生み出し、新しい政策を実行すると訴えた。しかし、多くの公約を実現できず有権者の信頼を失う結果となった。そのため、新政権は、高齢者医療費の自己負担分の引き上げなど、歳出削減にも取り組む姿勢を示さないと、民主党政権の二の舞いになる危険性もはらむ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら