東電福島復興本社が現地に発足
社員4000人体制 賠償と除染の迅速化図る[原発事故]

東京電力の福島復興本社が設置されたJヴィレッジ=福島県で12年11月29日

 福島第1原発事故の賠償や除染を加速させるため、東京電力は1月1日、福島県双葉郡の楢葉町と広野町にまたがるスポーツ施設「Jヴィレッジ」に「福島復興本社」を設立した。これまで主に本店(東京都千代田区)が担ってきた被災者への賠償支払い判断などの権限を復興本社に全面的に移し、人員も拡充。被災地に寄り添った形で復興業務を進めることで、失った信頼の回復を図る狙いだ。また、東電は政府の後押しを受け、廃炉に関する国際的な研究開発拠点を福島県内に設置する計画も進める。

 実質国有化の下で再建を進める東電は昨年11月7日、下河辺和彦会長ら社外取締役が中心となり策定した「再生への経営方針」を発表。福島第1原発事故の賠償や除染、廃炉の費用が今後10兆円を上回る可能性があると見通したうえで、国に対して新たな支援策を検討するよう要請した。

 その一方で、「福島原発事故への対応こそが会社の原点」とも強調。復興本社の設立や廃炉に関する国際拠点の整備、全社員約3万8000人を交代で福島に派遣して行う復興支援活動などを盛り込んだ「改革集中実施アクションプラン」も同時に発表し、「福島から逃げない」(東電首脳)姿勢を前面に打ち出した。

 東電の石崎芳行副社長は昨年11月29日、復興本社代表就任(1月1日付)の辞令を受け福島県庁で記者会見し、「福島に根を下ろし、全力を尽くす」と決意を述べた。

 復興本社には本店などから約500人を順次増員し、発電所などに在籍する社員も含めて県内4000人体制とする。Jヴィレッジには石崎氏のほか企画総務部門の約30人が常駐し、賠償に関する相談や放射性物質で汚染された土地・家屋などの除染、帰還に向けた支援などを統括する。

 賠償や除染などの実務は、作業の利便性を考慮して福島市内に本部を設置するほか、いわき、郡山、会津若松、南相馬の各市にもそれぞれ事務所を構えて対応する。

 復興本社の設置を巡っては、県庁所在地である県北の福島市のほか、浜通りの南相馬市や広野町、県中の郡山市などが誘致に名乗りを上げた。

 こうしたなかで東電は最終的に福島第1原発の南方約20㌔のJヴィレッジを選定した。その理由について、東電の村永慶司・福島本部企画総務部長は「今回の事故は双葉郡にある福島第1原発で起き、多くの住民の方々に避難を強いることになった。双葉郡としっかり向き合って復興業務を推進しなくてはならない」と説明する。

 アクションプランには、復興本社設立のほか、廃炉に関する国際的な研究開発拠点の設置も盛り込んだ。これは、政府と東電が福島第1原発1~4号機の廃炉に向けた取り組みを推進するためまとめた「中長期ロードマップ」に沿ったもの。

 具体的には、▽放射性物質の分析などを行う「国際原子炉安全研究センター(仮称)」▽高い放射線下で的確に作業を行うために実際の作業環境を模擬的に再現する「モックアップセンター(同)」▽汚染された機器や装置を補修・点検する「機器装置メンテナンスセンター(同)」――などを総合的に整備する。廃炉の技術開発を加速させるため、電力会社や原子炉メーカーなどが出資しあう「国際技術開発組合(同)」の設立も掲げる。

廃炉へ世界の英知結集

 福島第1原発の廃炉を巡っては、炉心溶融(メルトダウン)により他の物質と混ざり合った状態で固まった核燃料の取り出しや、原子炉建屋内に流入した地下水の処理、放射性廃棄物の処理・処分など克服すべき技術的課題が山積している。

 そのため国内技術だけでは限界があり、米スリーマイル島原発事故や旧ソ連チェルノブイリ原発事故で培われた知識や技術など「世界の英知を結集する必要がある」(中長期ロードマップ)として、国際原子力機関(IAEA)や経済協力開発機構(OECD)などの国際機関との協力を強める方針が示されている。

 こうしたなかで、海外の知見を積極的に取り込む動きを、政府も後押しする。政府は昨年12月、福島県郡山市で「原子力安全に関する福島閣僚会議」をIAEAと共催した。日本政府を代表して出席した玄葉光一郎外相(当時)は、主催者演説で「(福島第1原発の廃炉は)国際的にも未経験の作業で、長い年月と新たな技術が必要になる。国内外の知見を広く集め生かしていくことが必要で、日本は世界と協力し、世界に開かれた形でこの作業を進める」と強調した。

 そのうえで、今年中にIAEAの専門家チームを受け入れると表明。廃炉作業に助言するアドバイザリーグループの立ち上げをIAEAに要請した。経済産業省も次官級の佐々木伸彦経済産業審議官が「福島県に(廃炉に関する)国際的な研究開発拠点を整備し、研究開発の分野においても主導的な役割を果たしていく」と言明した。

 IAEAの天野之弥事務局長もこれらの要請に対して前向きに対応する考えを示しており、福島を廃炉の世界的な拠点にするための国際協力が本格的に動き始めている。

 日本原子力産業協会によると、世界各国では現在400基を超える原発が稼働しており、既に停止して廃炉を待つ原発も100基以上に上る。今後、福島第1原発の廃炉を通じて得られる最新の経験や技術は「世界各国の廃炉に貢献できる」(経済産業省幹部)とみられており、海外の専門家の関心も高い。こうした拠点が廃炉に関する人材育成の場となることも期待されている。

 このほか、東電は福島県の浜通りに世界最新鋭の石炭火力発電所を設置する方針も示している。電力の安定供給と地域経済の振興、雇用の創出を両立させる狙いだ。

 その一方で、福島県の佐藤雄平知事は昨年11月19日、東電本店を訪れて広瀬直己社長と会談した際、「とにかく賠償が遅い。現場感覚でしっかり受け止めて欲しい」と述べ、賠償の迅速化を強く要請した。東電がアクションプランを画餅に終わらせず、実行を伴わせることができるかが今後、問われることになりそうだ。

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