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「安倍相場」に乗り遅れたのでは、とお悩みの方は必読!日本株はまだ買ってもいいか?
〔PHOTO〕gettyimages

 1月4日の大発会、日経平均は、終値で前年末比292円高となる1万668円をつけた。

 今回の株価上昇は、解散総選挙の決定と自民党の安部晋三総裁がデフレ脱却のための「大胆な金融緩和」に言及したことから始まった「アベノミクス相場」だ。野田佳彦前首相が「やりましょう」と解散に言及し、政権交替が現実味を帯びて来た日の前日(昨年11月14日)の終値8664円を起点と考えていいだろう。日経平均の値幅で約2000円、率にすると早くも23%以上の上昇だ。

 これだけ上昇すると、いままで含み損を抱えていて、自分の投資のことをなるべく忘れようと思っていた投資家にあっても、含み損が消えて、計算上の損益がプラスに転じ、俄に元気が出た方が少なくないのではないか。

 昨年末辺りから、例えば、投資信託の積立投資の損益がやっとプラスに転じたという類の話を、筆者の周囲でも複数聞いた。

 この株価上昇は、消費にも好影響を与えたようだ。今年の正月のいわゆる「初売り」では、特に高額商品に関して景気のいい話が幾つか聞こえた。景気の回復を切に願う多くの人々にとって悪い展開ではない。

 他方、「まだ株を買っていない人」は少々複雑な気分だろう。「(株価が)下がったら買いたい」と思いながら、ここまで指をくわえて見ていた投資家が少なくないのではないか。

 本稿では、この株価で、日本株をまだ買ってもいいものかどうかについて考えてみる。

 オーソドックスなアプローチとしては、「株価水準」と「材料(の変化)」の二面から考えるべきだろう。

民主党の政権運営がいかに酷かったか

 先ず、株価水準はどうか。

 日経平均は1月4日終値時点で、日経平均は、PBR(株価純資産倍率)で1.14倍、PER(株価収益率)で17.63倍(注;日経予想の今期利益ベース)だ。機関投資家は、日経平均よりもTOPIX(東証株価指数)で考えることが多いが、こちらで見てもそれぞれ1.09倍、17.85倍と大差はない。

 先ず、PBRは、それぞれの構成銘柄の“平均"が俗に「解散価値」と呼ばれて「下値のメド」とされることが多い1倍をやっと上回ったところ。常識的にいって、問題はない。1.5倍くらいまでは問題のない範囲だ。

 また、17倍台後半のPERは、米国などで経験的に「過熱」が懸念される20倍よりも十分低い。こちらも大まかには問題がなさそうだが、もう少し丁寧に見てみよう。

 筆者は、株価を分母、予想一株利益を分子として計算される「益利回り」(PERの逆数に相当する)に長期的な予想の「名目成長率」を加えた値が、長期金利をどの程度上回っているかで、株価の高低を判断する事が多い。

 前者の和は、純利益を株主のものと考えた場合、株式が長期的に株主に無理なくもたらすことができるリターンに相当する。

 大まかな判定基準は、この和と長期金利の差が、「6%差だと株価はノーマル(安くも高くもない)」、「5%差だと株価は高い」、「7%差だと株価は安い」、というものだ。

 まず、日経平均の益利回りは5.7%(小数2位四捨五入。利益は日本経済新聞社の予想する今期利益を使用)だ。

 問題は成長率だ。長期の予想成長率は残念ながら直接的には観察できないので、実質成長率と物価上昇率を大まかに予想して見当を付けるしかない。

 政府は、2013年度の(実質)成長率見通しについて2.0%程度とする方向で調整に入っているようだ。民間のエコノミストも2%前後を予想する向きが多い。ちなみに、これまでの政府見通しは昨年8月時点で発表された1.7%だ。

 物価は、アベノミクスが目指す「2%インフレ」に達するには時間が掛かるだろうが、向こう数年を堅めに見積もって、年率0~+1%の間くらいで見てもいいのではないか(もちろん、なるべく早く2%レベルに達するほうがいいが)。

 現時点で大まかに期待することができる名目成長率イメージは2%強くらいではないか。これと先の益利回りを合計は、7.7%強ということになる。

 他方、長期国債利回りは0.8%台なので、現在の株価は「普通よりも安いゾーンにある」、と筆者は考える。

 なお、長期金利は近い将来、名目成長率の上昇と一緒に上昇することが考えられるが、両者が同程度に上昇する分には、株価に対する影響は中立だ。

 また、現在のような為替レートの水準が続くなら、益利回りの分子の計算のもとになる企業の利益は今期、来期とも、かなりの増益になる可能性があり、上記の計算には「余裕」があることを付け加えておく。

 些か乱暴な言い方になって恐縮だが、株価がこれだけ上がってもまだ安いと思えるくらいの水準にあるということは、民主党政権時代の政権運営がいかに酷くかつ将来の期待を損なうものであったかを、かつての株価が反映していたということだろう。

 株価水準面からいうと、現在までの株価上昇は、民主党政権時代の日本経済の「失われた3年」ともいうべき状態からの脱出期待だけで十分に説明できるレベルのものだ。

 他方、材料面はどうか。

 今年の海外要因は、現時点で「中立」という程度に見てもいいのではないか。

 欧州の問題はまだ片付いたという状態にはほど遠いが、スペイン、イタリアの国債利回りから見て、去年よりも悪くなったという感じではない。大まかなイメージは「欧州の日本化」だが、どん底は脱しつつあるのではないか。

 米国は、不動産市況が回復しつつあり、失業率も低下してきた。中国には政経両面の不安要素があるが、米国経済の好転と合わせて考えるなら、総合的に海外を「中立」程度に見ることに違和感はない。

 国内では、市場は今後、アベノミクスの実現具合と投資家の期待との「ギャップ」を見ていくことになる。

 例えば、「インフレ目標2%」に関しては、仮に次期日銀総裁が財務省OBで「インフレ目標2%」に口頭で同意するだけなら「中立ないしマイナス」(予想通りだが、少しガッカリ)。明らかに金融緩和積極派の正副総裁が選ばれるなら「やや期待以上」。日銀法改正まで踏み込んで将来についても「マイルドなインフレを目指す」ことがより明確になるなら「プラスのサプライズ」。――といった具合に評価されて、株価に織り込まれていくことになるだろう。

 この点については、先頃のインタビューで麻生太郎財務相が、いかにも大物然と(?)、次期日銀総裁について出身にこだわらない(財務省OBでもOK?)、政府と日銀の「協定」の形にもこだわらない、などと述べていることは、要注意だ。

 財務省、日銀の双方に自分の影響力をアピールした積もりかも知れないが、早期に株式市場の期待をしぼませる要因になりかねない。誰か、麻生氏への説明用に、デフレ脱却における「期待」の重要性について、分かりやすく漫画に描いて貰えないものか。

 もっとも、安倍政権全体としては、年前半には秋に消費税率引き上げ決めたい財務省を含めたオール霞ヶ関に対して、景気対策を大盤振る舞いさせることは可能だろう。

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