スポーツ

二宮清純レポート
勝負の厳しさを誰よりも知る男 森脇浩司 オリックス監督「人生は微差が大差を生む」それに気づいたから、いまの自分がある

2013年01月12日(土) 週刊現代
週刊現代

 現役時代から、決して目立つ男ではなかった。彼のもとに飛んだ打球は、自然とアウトになってしまう。本塁打より圧倒的に犠打の数の方が多かった。そして今、気づけば監督になっている。「変わることは義務だ」—ブレない男の信念を読む。

変化を恐れてはいけない

 この10年で8人もトップが入れ替わった。日本の政治の話ではない。プロ野球のオリックスのことだ。その間、最下位5回。Aクラスは2008年のわずか1回だけ。'12年も優勝した北海道日本ハムとは17・5ゲーム差の最下位だった。

 落ちるところまで落ちたチームの再建を誰に託すか。球団が指名したのは前チーフ野手兼内野守備走塁コーチで、岡田彰布監督の解任後、監督代行を務めた森脇浩司だった。指揮を執った9試合で7勝2敗と大きく勝ち越したことも監督を任せる決め手となった。

 私見ながら、この人事はオリックスにとっては久々のヒットだ。コーチとしての実績はもちろん、人柄も申し分ない。ビジョンも明確だ。「一度は監督をやらせてみたい」と思っていたのは私だけではあるまい。

「我々にとって変化は義務なんですよ」

 施政方針でも述べるかのように新指揮官は語気鋭く切りだした。

「まず、〝我々は弱いんだ〟ということを素直に認めるべきです。故障者が多かったなんて理由になりません。強いチームがもっと強くなろうと努力しているのに、弱いチームが変わらなくてどうするのか。

 変化の大敵は固定観念と先入観。〝今まではこうだった〟と言ってみたところで、それは通用しません。人間というものは〝もう失うものはない〟と言いながら、それでも保身に走ろうとする。これを打破しない限り、強いチームに生まれ変わることはできません」

 若き日のジョン・トラボルタを彷彿とさせるイケメンだが、弁も立つ。森脇の口調は、さらに熱を帯びる。

「微差は大差なんです。開幕して、いきなり10ゲームも離されることはありません。勝ったり負けたりしながらペナントレースは進んでいく。ところがシーズンも終盤に近づくと、気づけばもう挽回不可能な差になっているんです。

 これは、どこに原因があるのか。その日だけ見れば、ほんの小さな差でも、積み重なっていけば大きな差になってしまう。雪だるまと一緒ですよ。そうならないためには現実を直視して反省し、次に向かっていい準備をするしかない。それを繰り返すことによって、チームも選手も成長できるんです」

 '12年のオリックスは開幕前、韓国で三冠王の実績を持つ李大浩らを補強したことで一部から優勝候補との評価を得ていた。監督の岡田は「絶対優勝する」と豪語していた。

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