「宇宙の始まりには得体の知れない物質がうようよしていたんです。その謎を解く鍵をニュートリノという素粒子が握っていることを突き止めたんです」
村山斉「宇宙になぜ我々が存在するのか」第3回

第2回はこちらをご覧ください。

原子の世界を探る

 私たちの体も含めて、身のまわりにある物質は、みんな原子でできています。原子をよく見てみると、真ん中に小さな原子核があって、そのまわりを電子が飛び回っている構造になっています。この構造は、太陽系の構造にたとえられることがよくあります。

 原子の内部の様子がわかってきたのは、一八九〇年代後半からです。一八九七年にイギリスのジョセフ・ジョン・トムソンが、蛍光灯のようにほとんど真空状態のガラス管の両端に高い電圧をかけたときに発生する陰極線の正体が、小さな粒々であることを発見し、電子と名づけました。

 陰極線のような放電現象の他に、高温の物体から電子が飛び出る現象や、金属に光をあてたときに電子がたたき出される光電効果などといった現象が発見されるようになり、原子の中に電子が含まれていることがわかってきました。

 電子はマイナスの電気を帯びた小さな粒子でした。この電子を含んでいる原子はほとんどが電気的に中性なものだったので、原子の中にはプラスの電気をもっているものがあるはずだと考えられるようになりました。このとき、原子の内部については、二つの説がもちあがりました。

 一つ目はレーズンパンのように、原子の中に電子が練り込まれるように散らばっているレーズンパンモデル。二つ目が、太陽系の惑星のようにプラスの電気をもった核のまわりを電子が回っている太陽系モデルです。この二つのモデルは大きく対立をしていましたが、一九一一年に決着がつきました。イギリスのアーネスト・ラザフォードが金箔にアルファ線をあてる実験をおこなったとき、ほとんどのアルファ線は金箔を通過したのに、たまに、はじき返されるように大きく曲がってしまうものがありました。

図1-4 太陽系モデル
金箔にアルファ線を撃ち込むと、ほとんどが金箔を通過するが、一部だけ跳ね返される。その結果、真ん中に原子核があり、電子はそのまわりを回っていることがわかった。

 アルファ線の正体はヘリウムの原子核なので、電子よりも重く、プラスの電気を帯びています。ラザフォードの実験から考えられることは、原子の中はほとんどスカスカだが、真ん中に芯のような核があるという原子の姿でした。つまり、二つのモデルのうち、太陽系モデルが正しいという結果になったのです(図1-4)。

 さらに、一九一九年に、ラザフォードは窒素ガスにアルファ線をあてることで、窒素原子を酸素原子に変える実験にも成功しました。このとき、プラスの電気をもった新しい粒子を発見しました。それが陽子でした。この発見によって、原子核でプラスの電気をもたらすものの正体が陽子であることがわかってきました。