坂村健 第1回 「あのトロンを開発した天才学者とIT音痴のシマジの不思議な友情」

2013年01月09日(水) 島地 勝彦

撮影:立木義浩

<店主前曰>

 相性のいい男同士の友情は、5,6年ぶりに会っても、気持ちは昨日別れたばかりのような感じで会えるものである。新宿伊勢丹メンズ館8階のサロン・ド・シマジに東京大学の坂村健教授がひょっこり現れたのは、たしか去年の9月末だったか。教授がサロン・ド・シマジの名物、スパイシーハイボールを美味しそうに飲んでいたとき、わたしはコンピュータの泰斗、坂村教授に、このネスプレッソ・ブレーク・タイムの対談の相手に登場してくれないか、とお願いした。教授は二つ返事で引き受けてくれ、わたしのガラパゴス携帯に自分のスマホから新しい携帯番号を移してくれた。

「悪党は携帯を持たない」とウソぶきながら、じつはわたしは密かに携帯は持っている。さすがの悪党も時代の流れには勝てない。ただしわたしは、いまだ自分の携帯にひとの電話番号を登録出来ない見事なアナログ人間なのであるが。

 トロンの開発者、坂村健とアナログ人間のシマジがどうしてこんなに親しくなれたのか。それは坂村教授が美食家でワイン好きだったからなのだ。まだ坂村健が東大の助教授だったころから、ふたりで何度もグランヴァンを飲みながら美食に耽ったものである。

「シマジさん、いつもこんな美味しい食事とワインをご馳走になるばかりでいいんでしょうか」と心配の面持ちで教授が尋ねた。

「心配ご無用。男同士は肝胆相照らす仲になると、必ずいずれ一緒に仕事がしたくなるものです」とシマジは軽いアクビをしながら応えた。

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